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2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

洪水伝説がもたらしたも、石炭と石油~『岩は嘘をつかない―地質学が読み解くノアの洪水と地球の歴史』D・R・モンゴメリー氏(2015)

岩は嘘をつかない―地質学が読み解くノアの洪水と地球の歴史

 モンゴメリー氏は地形学の研究家、洪水伝説を軸に、科学と宗教の豊穣なる応酬から誕生した地質学(2015)

 

 

地質学とは?

地質学とは、地面より下(生物起源の土壌を除く)の地層・岩石を研究する、地球科学の学問分野である。1603年、イタリア語でgeologiaという言葉がはじめてつかわれ、1795年以降一般に受け入れられた。(Wiki

地質学の予兆

(17世紀の)自然哲学者は、自然を研究することは、神の創造の謎を解く鍵になると信じるようになった。観察によって洞察への道が切り開かれたのだ。自然を研究する者は、地球を水没させた大洪水を実証するだけでなく、首尾よくやり遂げた神の手腕を明らかにすることや聖書・・・が示す意味を解明することもできると確信していた。

地質学のもたらしたもの

地域の地質の理解を深める原動力となったのは、科学的な好奇心と宗教的信念だけではなかった。鉄や石炭の需要が鉱業や鉱物学の発展を促したように、鉄道や運河の建設が地域の地質を理解する必要性を高めたのだ。・・・地域の地質について理解が深まるにつれて、地球史におけるノアの洪水の役割が再評価されるようになった。測量技師で運が建設を手掛けたウィリアム・スミス(1769~1839)はイングランドの岩石層の構造を明らかにして、1815年に世界初と広く認められる地質図を作成した。・・・・その地質図によって、一度の洪水で岩石が何層も体積したという(聖書由来の)考えも否定されることになった。(142ページ)

現代の地質学者は創世記をどう捉えるのか?

創世記の天地創造を文字通りに解釈するのは、その物語の価値を正当に評価することにはらないと思う。斜め読みをしても、1日目から3日目までは、4日目から6日目までのおぜん立てに費やされたことがわかる。・・・3という数字を繰り返すのは、詩によく見られる古典的技法で、天地創造の物語が史実を記そうとしていたとは思えない。・・・創世記を文字通りに解釈するのが難しいのは、その簡素さのためである。天地創造は創世記の1章と2章に56節で記され、ノアの洪水は6~8章にわたる68節で記述される。つまり、聖書は「ニューヨークタイムズ」紙の第1面と同じ行数で、45億年の地球史を説明していることになる。(290ページ)

岩は嘘をつかない

17世紀以来欧米人はノアの洪水の痕跡を探し求めた。それは宗教的信念というより、神が世界を6日で作ったその根源的力を知りたかった、あるいは獲得したかったからだと言っていいのだろう。世界に洪水伝説は沢山あるも、当たり前だが地球が一度の洪水によって造り直されたことを理論的に指し示す証拠はない。

その過程で生まれた地質学は石炭と石油を見つけ出した。神に迫ろうとした還元的手法は知識によって過去地球上に蓄えられたエネルギーを開放することに成功した。進化論や地質学の前に聖書があった。現代は聖書によって変質していた。

蛇足

洪水伝説がもたらしたもの、地質学、そして石炭と石油

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