毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

いつ雲に名前がついたか?~雲のでき方が解明される以前、人々は"オーラ"の泡が雲になると考えていた。

雲の「発明」―気象学を創ったアマチュア科学者

雲で気象を読むのは、じつは非常に近代的な考えかたである。雲は、不定形でつかみどころがなく、移り変わるものの代名詞だったのだ。

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1802年ハワードは論文を発表

ルークハワードの論文、「雲の変異」の神髄は、雲には多くの個別の形があるが、基本形はごくわずかであるという一貫した-ラマルク的な-洞察だった。型も形も、大気中に気体、液体、個体で存在する水分に影響を及ぼす物理的過程に左右される。予想を超えた複雑性にもかかわらず、雲が形成される物理原則は、それ以外の自然変化のように容易に理解できる。・・・雲の形成は水蒸気が存在する空気の温度、湿度、気圧に左右される。空気ポケットが暖かくなればなるほど、目に見えない水蒸気の量が増える。逆に、空気が冷えると、水蒸気の量は減っていき、やがては露点に達する。・・・雲は、空気が対流を通じて上昇し、露点で冷却されて大気中に自然に存在する粒子を核としてその周りに凝結してできるものだ。(143ページ)

ハワードは3つの雲をその基本形と分類

ハワードが考案した名前は、それぞれの雲の特徴的な形を表したもので、「異なった国で使用される際の」簡便性を考えてラテン語に由来していた。巻雲、積雲、層雲。雲は、このようにまきひげ、重なり、層によって分類された。(47ページ)

積雲は、層雲になることもありうる、あるいは、そこからさらに水分が蒸発して対流に乗って上昇し、上層で巻雲になることもある。雲の形態は蒸気の結合と破壊によって形成され、対流に乗って上昇し、あるいは引力によって下降するが、雲学はその変化のあらゆる段階描くことができる。(146ページ)

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現在の雲の分類、ハワードは3つの雲が基本と考えた。

19世紀という時代

著者によれば19世紀は自然科学教育が一般化し、科学の進歩過程に立ち会った時代と言う。有人気球飛行は1783年であり、ヨーロッパの人々は釘づけになった時代だった。ハワード以前は小泡理論で認識されていた。雲は泡であり、「太陽に活動によって水の粒子が「オーラ」に満ちた空洞の小球体、あるいは極端に希薄化された空気体を形ずくる」(43ページ)というもの。ハワードはそこに物理の思考法を持ち込み、分類し、名前をつけた。わずか2世紀前まではどうして雲ができるか理論的に説明できていなかった事になる。雲の基本形は3つに分類される、今のその分類を基礎にして分類されている。

現在の視点から考える

わずか200年以上前までは水滴がオーラに包まれて泡になる事を受け入れていた。今、オーラが云々と言われれば「???」、となってしまうが説明の付かないものを受け入れる為の論理。そして「泡」という表現は現在でも詩的な表現としては違和感のない事にも気づかされる。18世紀までの人々が無知だった訳でも、21世紀の我々が根拠の薄い説明原理を受け入れる素地のある事に気づかされる。

蛇足

金星には硫酸!の雲がある