毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

天気予報はコンピュータで数値予測を計算~いつ始まってどうやって予測しているか?

天気予報はこの日「ウソ」をつく (日経プレミアシリーズ)

安藤氏は気象予報士、科学記者。本書は2014年8月発刊

 

 
数値予想では垂直方向にも格子を設定

風が吹いたり、雲が発生したり、雨が振ったり。こうした現象は、すべて物理法則に沿って起きています。たとえば空気の塊に力が働き、動くのが気流です。ここには流体力学の法則が働いています。上昇気流が起きる時に水蒸気が凝固して水滴にある際の潜熱の出入りは、熱力学の法則が関係します。現在の状況が正確にわかれば、物理法則に沿って少し先の状態を計算できます。・・・計算範囲内の大気を細かく格子状に切り分け、格子ごとに計算をしていきます。・・・格子は正確にはある体積をもつ立方体のようなものです。水平方向だけでなく、高さ方向(鉛直方向)にも区切って計算する為のです。(50ページ)

現在使用されているシミュレーションの格子の大きさは5㎞×5㎞×75層(垂直方向)f:id:kocho-3:20141031074446p:plain

気象庁|数値予報とは

 

カオス理論とアンサンブル予想

(数値予報では)大気だけでなく、海の状態も考慮し、大気と海の間でどのようにエネルギーをやりとりするかを含めて膨大な計算をします。しかし何かのはずでちょっとだけ最初の方の状態がずれてしまうと、それがあとの方の計算に大きな影響を及ぼし、実際の状態とは似ても似つかぬ結果が出てしまうことがあります。これを何とかできないかということで、最初の状態、つまり「初期条件」を少しづつ意図的に変えて何通りも計算し、ある程度の広がりをもって結果を出した上で傾向を判断する「アンサンブル予報」という手法が使われています。(129ページ)

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気象庁 | 予測に伴う誤差とアンサンブル予報

 

そもそも数値予測はいつ始まったか?

数値予測の可能性が最初に提唱されたのは今から100年程前の、1904年のことです。ノルウェーの気象学者ビヤークネスが、大気の状態を正確に把握した上で物理法則に従って方程式で計算すれば、天気の予想ができるという考えを示しました。・・・計算による予想を実践に移したのは、イギリスのリチャードソンという学者です。成果は1922年に出版された「数値過程による天気予測」にまとめられています。非常に限られた観測データをもとに、手回しの計算機を使い、「6時間先の予報」を出しました>(63ページ)

数値予測による天気予報

日本で数値予測による天気予報が導入されたのは1959年。数値予測はスーパーコンピュータの本格的活用が無いと膨大な数値計算をクリアして始めて実用化された。100年前のビヤークネスから50年かかった事になる。1960年ローレンツは天気の数値予測から初期値に大きく依存するカオス理論を導き出した。今はまだカオス理論を取り込んだアンサンブル予測はアンサンブル予測は計算の限界が制約条件になっていると想像できる。アンサンブル予測が「量子物理の重ね合わせ」を彷彿とさせる事を考えると量子コンピュータの登場が解決する事になるのかもしれない、後何年かかるのであろうか?

蛇足

「平年」とは過去30年(1981~2010年)の平均、20年前の過去30年平均(1961-90年)より0.5度平均気温が上昇。

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