毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

フォークの進化論から分かる事~物を進化させようという発想はルネッサンス以降の唯物論がベース

フォークの歯はなぜ四本になったか 実用品の進化論 (平凡社ライブラリー)

左手にナイフ、右手にフォーク、西洋で一般化したのはそれほど昔の事ではない。どうしてフォークが登場し、4本歯になったか?ペトロフスキー氏はデザイン論専攻、原書は1992年刊行。

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左:二又フォークと、丸いナイフ  右:四本フォークと、丸くないナイフ

 

フォークの歯はなぜ4本になったか?

初期の二又のフォークは、肉を切り分ける際の押さえとしては十分に役だったが、エンドウマメなどまとまりのない食べ物をすくうには不便だった。ナイフの刃が丸くふくれた形に進化したのは、食べ物を効率よく口に運ぶためである。(29ページ)

四本歯のフォーク-先割れスプーンと呼ばれた-が使われ始めると、もはやナイフで食べ物をすくう必要がなくなった。(30ページ)

失敗こそがモノの改善を生み、それはまた別の失敗を生む

発明家やデザイナーやエンジニアを突き動かして、ほかの人々の目には申し分ないか少なくとも使えると映るモノを修正させる要因は、明らかに現存するテクノロジーにおける失敗の知覚である。・・・そして失敗は、多分成功よりはるかに数量化しやすいのだけれども、常に主観的な面を止めている。(420ページ)

 

以下にデザイン基礎理論の研究家、棚橋弘季氏の解説から引用

 
失敗の為にモノの形を生み出すという活動そのものがルネサンスに発明

「失敗こそがモノの形を生み出す」発明やデザインという活動それ自体が、人類においてはじめから存在していたのではなく、ある時期に発明されたものであるということである。・・・(ルネサンスは)世界を生き物とする物活論的(アニミズム)的な見方から、世界を機会(メカニズム)とする見方縁起点が移動する中での出来事である。・・(ルネサンス時期に)構想(デザイン)という考え方が登場する。Oxford-English dictionaryに英語としてdesgineとう単語が初出するのは1593年である。(解説440ページ)

フォークはルネサンス精神がデザインした

フォークはルネサンスの文化の雰囲気のなかで登場し各国に使われる様になったのだ。それは単なる偶然の一致ではない。中世までヨーロッパのものづくりはミメーシス(模倣)の技法-外界にあるものを巧みに写す技術―でやってきた。それがルネサンスを境に、内面になるもの=構想を形にするデザインの技法に変化していく。その時、外界=世界は模倣の対象から、内面世界において思起されたよりよきモノを繁栄する場と変わった。(解説443ページ)

実用品の進化論

本書の現題は実用品の進化論である。生物における進化論の議論が政治的な、あるいは宗教的な議論を巻き起こしてきた。物の進化の文脈では「物の進化」はユニバーサルな合目的な活動ではなく、環境への適合活動である事が明確になる。物の進化に関してはインテリジェント・デザイン「知性ある何か」によって設計された事は間違いないが最適解ではない事もまた明確となる。解説で棚橋氏が指摘をする様にdesgineという言葉が16世紀末に現れた事は西洋ルネサンスとの関係性もまた明確にする。

蛇足

デザインとは構想する事

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