毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

地球史という視点から観た、ゴーギャンと生命の定義~世界は外から見ないと分からない

 我関わる、ゆえに我あり ―地球システム論と文明 (集英社新書)

松井氏は惑星(宇宙)物理学者

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地球進化の歴史は火の球地球からの「冷却」と物質圏の「分化」

地球は生まれた時、どろどろに溶けている状態でした。初め熱く、だんだん冷えていく、これがエネルギー論的にみた歴史です。冷却に伴って、融けて均質に入り混じっていた状態が変化します。様々な物質(鉱物)が、それぞれの温度、圧力条件の下で析下しました。なお、冷却すなわち「冷える」ことが重要だという本当の意味は、全体が一様に冷えるのではなく、冷える事によって「温度差」が生じることにあります。この温度差が地球のコアやマントルを動かし、大気や海を動かすのです。それが地球で言えば環境の多様化につながります。(39ページ)

我々はどこから来たのか?~著者は引用し解説する

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後世、ゴーギャンに代表作としてその名を残すこの絵画は、1897年、故郷のフランスから遠く離れた南の島タヒチで、描き上げられました。急速に変化を遂げていく文明社会に対する懐疑と絶望、そしてそうした文明をつくり上げた人間という存在に対する根源的な問いかけ。それらを、ゴーギャンは絵画という芸術に見事に昇華させました。・・・・・私が重要だと思うのは、彼がそうしたテーマを、タヒチという場所で問い直したという事実です。世界を外から見て初めて世界とは何なのかが見えてくる。・・・まさしくゴーギャンは、文明の辺境に行くことで、文明とは何かを見つめようとしたのではないでしょうか。(59ページ)

生命を定義するには?

現在では「細胞という生命の入れ物があり、代謝をし、自己複製する」事が生命の基本的な特徴と考えられている。著者は「生命現象と後世物質の特徴を記述しただけであり、生命を定義したことにはなりません。」(181ページ)

最大の理由は、我々が地球上の生物しか知らないからです。いくら生命の特徴を突き詰めても、それは地球という制約条件における生命の特徴の記述に留まります。我々が知っている地球生命だけをもとに生命を考えても、果たして、それが普遍性を持つことになるのか、ということです。したがって、現状でいえば、地球生物以外の生物を発見する以外に生物を定義する方法なないというしかありません。(182ページ)

 世界を外から見る

世界は外から見ない限り分からない。ゴーギャンの絵は文明を外から眺めた時一番外側に移る辺境という視点を与えてくれる。地球史を時間的、空間的制約を俯瞰してみると、物質としての分化と熱としての冷却の歴史と記述できる。これもまた地球の外からの視点があって初めて獲得できる視点であるという事。生命の定義もまた同様の関係性になっている事がわかる。中にいる限りすべては均一であり、外から見て初めて全体と多様性を認識できる。

蛇足

均一は視点を変えると多様性になる。