毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

「良く噛んで食べなさい!」を最新の脳科学で解釈する~書評「美味しさの脳科学」

美味しさの脳科学:においが味わいを決めている

著者は神経生物学の研究者。2014 年4月刊

 

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 「美味しさの正体を、脳科学がとらえた」美味しさ(味わい)は、口ではなく、脳が創り出している。その決め手は、口中から鼻に抜けるにおいであり、「においのイメージ」がパターンとして、脳で味わいを生み出すのだ。

食物の風味

食べ物や飲み物を噛み込んだり飲み込んだりすると、ふわりと立ち上がるにおい。それが呼気に乗って口の奥から鼻道を遡るから、私たちは風味を感じる。・・・この裏手の経路で運ばれるにおいを「レトロネイザル(後鼻腔)経路のにおい「口中香」とも呼ばれる。(16ページ)

嗅感覚につながるレトロネイザル経路の出発点となるのは、口に含んだ食べ物、飲み物だ。私たちは口にし食物を噛む(咀嚼する)時、舌で食物をあちらこちらへと転がす。・・・咀嚼している間も呼吸は続けているので、肺から送り出された呼気は、開いた咽頭蓋を抜けて喉の奥の鼻咽頭に流れこむ。・・・その時、鼻腔内で生じる渦流が嗅覚ニューロン、つまり嗅細胞を刺激するわけだ。(45ページ)

風味は脳の創造物である

脳を中心に据えて、それが食物の感覚をいかに創出するかを説き明そうするのがニューロ・ガストロノミーである。(19ページ)

嗅覚は前頭前野に直結

前頭前野は霊長類と人間の脳の最高中枢と見做されていて、人間の高次認知機能の大半を担う回路がここに納まっている。驚いたことに、嗅皮質はまさにこの最高中枢に狙いを定めて出力するのだ。・・・私たちが口にするあらゆる物から放出される揮発性分子は、人間の脳に最高中枢で迅速に評価されるに値するほど重要という事である。(158ページ)

 

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ポイント①嗅覚イメージはあらゆる感覚、記憶が統合される

その嗅覚は視野と同じように脳で解釈される嗅覚イメージが本質である事。一言でいえば、嗅覚は他の感覚、味覚、視覚、聴覚、触覚、そして言語や記憶、といった情報が統合されて嗅覚イメージとなるという事。嗅覚イメージと視覚イメージが脳で形成されるシステムは同じである。つまりは極めて高次の処理が成されている事になる。

ポイント②食物、食欲は嗅覚イメージの影響大

食物は咀嚼されている間、嗅感覚を刺激し続ける。レトロネイザル(後鼻腔)経路の図により改めてその意味を知る。食事の美味しそうな匂いが食欲を刺激するのは日々感じる。咀嚼している間に「口中香」が嗅覚を刺激し続けているという点を始めて気づく。

食物の匂いの記憶は鮮明

どうして嗅覚が前頭前葉に直結されているか?食べ物の匂いは人間の生存にとって何より大切な外部情報であった。匂いが記憶に結びつく時、例えば家庭料理の匂いが様々な記憶をフラッシュバックさせる理由が良くわかる。

蛇足

「良く噛んで食べない」は脳に風味を十分に伝達し満腹中枢を満たす為。

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