毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

人の体には使っていない骨がある~ヒトは今も進化中という事

「退化」の進化学―ヒトにのこる進化の足跡 (ブルーバックス)

大塚氏は解剖学の研究家、「退化器官でたどるヒト4億年の歴史」

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退化とは

退化はもともとdegenerationやreductionの訳で退行、形成不全、縮小という意味である。ところが進化の逆が退化と誤解されている。確かに退化は器官が小さくなったり、数が減ったり、形が単純化したりすることだが、決して進化の逆ではない。むしろ進化にともなっておこるので、退化は進化の一部だと言ってもよい。

腓骨という存在

(骨移植の)スペアの骨として用いられるのが腓骨である。腓骨の腓は訓読みで「こむら」豊実、膝と足首の間の脛の後側(ふくらはぎ)をさす。この部位の骨は横ならびの脛骨と腓骨の二本からなり、足首の内くるぶしは腓骨、外くるぶしは腓骨からできている。但し膝関節で大腿骨とつなっているのは脛骨だけで、体重の90%は脛骨が支えている。腓骨は脛骨に比べればはるかに細く、太さ2㎝にも満たない。もちろん腓骨も初めからスペア用だった訳ではない。進化の過程で体を支える役割から解放されて控えにまわったのである。(57ページ)

哺乳類の関節

肘が後に回り、膝が前に回ったことである。・・・手足の接地点を体の重心近づけるためという説である。この説なら前からみて左右の開いている足を狭めるのと同様、横から見ても前後の足の接地点が狭まって、体全体として不安定になる分、運動性が増すように進化したとわかるからである。こうして私たちヒトの肘は前、膝は後に曲がるようになった。(58ページ)

現代人の骨格は年代の異なる退化異物の集まり

ヒトは今も進化している。進化の方向性は新しい器官が加わったり大きくなったりするのと同様、器官が消滅したり小さくなっていく事も含まれる。どちらも進化という事である。

腓骨は退化異物として後数千万年の単位でみれば無くなっていく過程にある。ヒトの体はすべてが合目的ではない。

日頃意識しない肘と膝の動き

肘と膝を動かしてみる。肘は前に、膝は後にしか曲がらない。本書で改めて関節の動きを意識して動かして認識したあ。。考えてみれば同じ方向に回っても良さそうなもの。肘と膝が同じ方向にしか曲がらないとすると可動範囲がずいぶん狭まる事に気づく。機能から見ればヒトの体はずいぶん合目的な様に見える。

蛇足

「親知らず」は歯が退化過程にある証拠。

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