毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

地球上の多種多様な生物が教えてくれること~弱者と強者の戦略

弱者の戦略 (新潮選書)

2014年6月発刊

f:id:kocho-3:20140925072633p:plain

生物の世界の法則では、ナンバー1しか生きられない

ゾウリムシとヒメゾウリムシという二種類のゾウリムシを一つの水槽で一緒に飼う実験を行った。すると、水やエサが豊富にあるにもかかわらず、最終的に1種類だけが生き残り、もう1種類のゾウリムシは駆逐されて、滅んでしまうことを発見した。・・・2種類のゾウリムシは生き残りを懸けて激しく競い合い、共存することができないのである。・・・こうした競争があらゆる生き物の間でくり拡げられ、その結果ナンバー1しか生きられない。・・・結局のところナンバー2は滅びていく弱者なのである。(70ページ)

f:id:kocho-3:20140925072546p:plain

ゾウリムシの続き~棲み分けによるナンバー1戦略

ゾウリムシの種類をかえて、ゾウリムシとミドリゾウリムシで同じ実験をしてみると、2種類のゾウリムシは共存したのである。・・・実はゾウリムシとミドリゾウリムシは、棲む場所とエサが異なるのである。ゾウリムシは、水槽の上の方にいて、浮いている大腸菌をエサにしている。一方ミドリゾウリムシは水槽の底の方にいて、酵母菌をエサにしている。・・・自然に存在している生物は、他の生物と少しずつ生息環境をずらしながら、自分の居場所を作っている。(71ページ)

ナンバー1の意味

自然界であればナンバー1になれる場所を見出さなければ生存すうることはできない。・・・どんなに小さくとも、ナンバー1を勝ち取った生物が、この自然界を埋めつくしている。世界のどこかの場所で、すべての生物はナンバー1なのである。

ニッチ

ニッチは本来、装飾品を飾る為に寺院などの壁面に設けたくぼみを意味している。やがてそては転じて、生物学の分野で「ある生物種が生息する範囲の環境」を指す言葉として使われるようになった。生物学では、ニッチは「生態的地位」と訳されている。一つのくぼみに、一つの装飾品しか掛けることができないように、一つのニッチには一つの生物種しか住むことができない。

f:id:kocho-3:20140925072347p:plain

ニッチ:壁のくぼみ、壁龕

 

強者の戦略、弱者の戦略

生物にとって種の特性にあった環境=ニッチでは強者であり、更に強者のいる環境では弱者であるという事。強者か弱者かは環境と競合によって決まっていている。生物は自由にニッチを選択し、ニッチを見つけられない種は絶滅していく。それでも世界は多くの種で満ちている。生存している種のすべてはニッチにおける勝者である。著者は「争うということは相当に無駄なことである。負ければ散々だし、勝っても無傷ではいられない。」(123ページ)と記す。強者は争う事に勝利した生物でなく、ナンバー1になれるニッチを見つけた生物である。競争と争いを区別して考える必要がある。生物は、群れる、メスを装う、他者に化ける、動かない、ゆっくり動く、くっつく、目立つ、時間をずらす、早死にする、、、様々な戦略を駆使し強者になっている。

蛇足

地球上の多種多様な生物があなたもまた強者だと教えてくれている。