毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

知性とは「食うか食われるか」、我々は既に次の段階の知性を獲得している~古生物学者の洞察から学ぶ事

失われた化石記録―光合成の謎を解く シリーズ「生命の歴史」〈2〉 (講談社現代新書)

 J・ウィリアム・ショップ氏は古生物学教授。35億年前の地層からシアノバクテリアの化石を発見したと発表。本書は1998年刊。

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35億年前のシアノバクテリアと考えられた写真。

(その後生物痕跡ではないとの分析がなされ、シアノバクテリアの起源は27億年前と変更されている。)

自然史ニュース |エイペクスの繊維は非化石

 
ダーウィンのジレンマ

「もしも(進化の)理論が正しいならば・・・・(先カンブリア時代の)世界は生物でいっぱいになっていたはずである。(しかしこの)最古の時期になぜ化石に満ちた堆積物が見られないかという疑問に対しては・・・私は満足な答を与えることができない。」

先カンブリア時代の世界は確かに生き物でいっぱいになっていた。しかしそれらは、この広大な期間の最後に近づくまで小さな微生物でありや微小藻類であり、伝統的な化石採取方法では決して見つけられないものだったのだ。(330ページ)

  

生命の歴史は2つ

生命の歴史は大きく二つの時代に分けられ、それぞれが固有の現象、スタイル、そして速度を持っている。すなわち、長命な生態学的万能選手であった微生物の世界、「顕微鏡サイズの生命の時代」と、短命な専門家であった真核生物に支配された顕生累代の「大型生物」の時代である。(334ページ)

 

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196ページの図に整理した内容を付加

 

 人間の知性の根源~可動性の真核従属栄養生物

知性の定義はいろいろである。しかし多くの人の同意するところでは、この特性の存在は生物が周囲の環境とどのように相互作用し、どのように影響を与えるかということで示され、そしてまた生命の樹の深い所に根ざしている。・・・知性のルーツははっきりしていると思う。原始的な可動性の真核従属栄養生物が行った食物の摂取行動だったのだ。・・・最終的には人類の知性として花開いた種子は、地球の最初期の歴史まで遡れる、食うものと食われるものという生態学的構造の中に見出すことができる。(339ページ)

 生物の歴史から学ぶ私の洞察

本書の著者は古生物学、地球で最古の生物シアノバクテリアの化石の研究者。彼の論理から生物の歴史は4つにわかれると考えた。①微生物の先カンブリア期、②真核細胞の時代、③真核細胞が可動性と知性を持った時代、④現代の人類の時代、と整理した。③と④を隔てる物は何か、③は「食うものと食われるものという生態学的構造」の時代、④は「情報のみを交換しあう構造をもった時代」と考えた。食う事はエネルギーを得ると同時に食われた物の情報は失われる。情報の交換だけに止めればそれは何度も利用可能である。知性の定義が他社との関係性であるなら、相手を補食せずに情報だけシェアすればより効率的である。知性をめぐる「食うか食われるか」の競争になったとも言える。

蛇足

情報の交換はエネルギーの交換より効率的