「原理主義」は科学にも存在する~ダーウィニズムを廻る議論からわかる事
本書は養老氏と茂木氏の対談、2003年の発刊。
第3章「原理主義を越えて」でダーウインの進化論について養老氏が語る。「集団化した原理主義がもっとも恐ろしい」。原理主義とは宗教的事象で教条主義の意味で使われる事が多いが科学の世界にも同様の現象がある事を知る。
ダーウインの自然選択説とメンデルの遺伝学説の融合
現在の進化生物学の標準原理とも言えるネオダーウィニズムは、ダーウインの自然選択説とメンデルの遺伝学説を融合したものです。偶然起こったDNAの変化が原因となって、生物の形と行動が少しだけ変化し、その変化のうち環境に一番適したものが自然選択されて生き残り、その遺伝子が徐々に優勢になっていくと主張しています。・・・イギリスやアメリカの社会ではダーウインの考え方の影響が非常に強くて、何か論を立てる時に避けられないですよね。
ダーウィニズムという原理主義
さまざまな生命に関する現象がネオダーウィニズムの枠内にあるというのは、あくまでもそのような解釈をすればできる、という話なのですよね。そもそもネオダーウィニズムとうのは、破れようのない構造をしている。まず起源として、偶然の変異があると言う。その先に偶然の選択を置く。その変異と選択を経て残った生物が、進化する。こういう論理をいったん立ててしまえば、それは、どうしても壊れようがないですよ。だからある意味では非常に正しいんですよね。・・・ネオダーウィニズムは論理的に破綻しようがないんですから。(102ページ)
ダーウィニズム原理主義
ダーウィニズムについて、「根本的に何かおかしいよ」とはいろいろな人が初めから思っているんですよ。とくに自然の中で実際に生物を観察している人は、ダーウィニズムに違和感を憶えやすい。(102ページ)ある解以外には考えようがないように見える。僕はそれを、原理主義の疑わしさというんですよ。ダーウィニズムは一種の原理主義なのです。(103ページ)
ダーウィニズムに対する違和感とは何か?
養老氏はダーウィニズムに対する違和感について明確にはしていない。一番の論点はダーウィニズムに従うと生命の多様性を説明できないのではないか?という事と考える。「まず起源として、偶然の変異があると言う。その先に偶然の選択を置く。その変異と選択を経て残った生物が、進化する。」は説明原理としては正しい。しかしながらこれがすべての生命現象の論理であるとは言えないと理解した。ダーウィニズムが及ばない所が存在するという事である。例えばダーウィニズムは生物発生のプロセスを説明していない。また細菌の様に20億年以上「進化していない生物」も存在する。ダーウィニズムはあくまで生物進化の説明原理であると理解する。
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蛇足
ダーウィニズムは説明原理に過ぎない。