毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

歴史

貨幣は国王あるいは国家機関によって発行されるべきか?~『文明の誕生 - メソポタミア、ローマ、そして日本へ』小林 登志子 氏(2015)

文明の誕生 - メソポタミア、ローマ、そして日本へ (中公新書) 小林氏は古代オリエント氏の研究家、都市や道路、お金やカレンダー、文字や宗教、そして動物との関係まで、私たちの文明がいつ生まれ、どう変わったのかを巨細に辿る。 (2015) 国王の横顔を刻ん…

ロシアから見るとアジアはどう見えるのか?~『プーチンはアジアをめざす』下斗米 伸夫氏(2014)

プーチンはアジアをめざす―激変する国際政治 (NHK出版新書 448) 下斗米氏はロシア政治論の研究家、ウクライナ危機が生んだのは、冷戦以来とも言われる深刻な米ロ対立であった。(2014) ロシアはエネルギー輸出国 ロシアは2011年の連邦予算のほぼ半分を石油…

イスラム主義者、中国、市場原理主義の台頭はいつ始まったのか?~『すべては1979年に始まった』C・カリル氏(2015)

すべては1979年から始まった: 21世紀を方向づけた反逆者たち C・カリル氏はジャーナリスト、イスラム主義者や中国、市場原理主義は、ここまで台頭したのか? 1979年は「市場」と「宗教」が支配する21 世紀を運命づけた時代の転換点だった。(2015) 市場と宗教 …

日本で最初の高速道路はいつできたか?~『道路の日本史古代駅路から高速道路へ』武部 健一氏(2015)

道路の日本史 - 古代駅路から高速道路へ (中公新書) 武部氏は建設省・道路公団で高速道路建設に従事、邪馬台国にはけもの道しかなかったが、奈良時代には幅12メートルの直道が建設された。現代の高速道路まで、エピソードで綴る通史 。(2015) 東名高速と遺跡…

どうしてマスタープランが必要か?太平洋戦争と石油から学ぶ~『人間はなぜ戦争をするのか』日下公人 氏(2000)

人間はなぜ戦争をするのか―日本人のための戦争設計学・序説 (知的生きかた文庫) 日下氏はエコノミスト、戦争は「正義と邪悪が戦うものではない」ことを、史実と丹念に収集した多くの情報から説明する。(2000) 大東亜戦争を誘発した石油の消費量と備蓄量の計…

最初に現代的な簿記を付け始めたのは誰だったか?~『帳簿の世界史』ジェイコブ・ソール氏(2015)

帳簿の世界史 ソール氏は歴史学と会計学の研究家、未来の資産価値を現在に置きかえる帳簿が生まれたとき、世界が変わった。(2015) 中世北イタリアはコンスタンティノーブルとの東方貿易で繁栄 12世紀には、フィレンツェ、ジョノヴァ、ヴェネチアといった商業…

19世紀フランスのジャーナリズムと現代のコンテンツビジネスはどこが同じなのか?~『十九世紀パリ怪人伝』鹿島 茂 氏(2000)

かの悪名高き十九世紀パリ怪人伝 (小学館文庫) 鹿島氏はフランス文学者、十九世紀パリのジャーナリズムはインターネットの世界につながっていた。(2000年) 19世紀のジャーナリズム 王政復古以来、ブルジョア階級が台頭し、ひらめきと才覚さえあればどんな下…

500年前ヨーロッパは小氷河期で今より気候が目まぐるしく変動していた~『歴史を変えた気候大変動』ブライアン・フェイガン(2001)

歴史を変えた気候大変動 (河出文庫) フェイガン氏は歴史と気候変動を研究、人類の歴史を揺り動かした五〇〇年前の気候大変動とは、いったい何だったのか?人口大移動や農業革命、産業革命と深く結びついた「小さな氷河期」を、民衆はどのように生き延びたのか…

アジアの語源を知っていますか?ヨーロッパとアジアと地域間競争という視点から~『資本主義は海洋アジアから』川勝 平太 氏(2012)

資本主義は海洋アジアから (日経ビジネス人文庫) 川勝氏は比較経済史の研究家、 なぜイギリスと日本という辺境の島国が経済大国になれたのか。それは決して偶然ではない。海洋アジアとの競争・脱却という視点で説明できるのだ―。(2012) 明治維新の後、日本…

出版とは典型的な資本主義活動であった~『知識の社会史ー知と情報はいかにして商品化したか』P・バーグ(2004)

知識の社会史―知と情報はいかにして商品化したか バーグ氏は文化史の研究家、知はいかにして社会的制度となり、資本主義世界に取り入れられたか。(2004年) 印刷出版、そして資本が知識の商品化を加速 本の出版それ自体商売であり、実業家たちの関心を惹きつ…

もしあなたが中世のヴェネチア商人だったら何をしますか?~『港の文化史的意味』会田 雄次 氏(1974)

論集・日本文化〈2〉日本文化と世界 (1972年) (講談社現代新書) 会田雄次氏の「港の文化史的意味」の章より、海洋商人と農民意識の比較を行っている。(1974) ヴェネチア商人 中世、とくに13、4、5世紀のヴェネチアは、富強を誇る大商業帝国になっていた。な…

新しいアウトプットはインプットの量を増やす。16世紀科学革命の教えてくれる事~『印刷革命』ELアイゼンステイン(1987)

印刷革命 アイゼンステインは印刷の歴史を研究、活字文化の起原を探求し、20世紀のメディア革命の理解にも深い示唆を与えるであろう。 (原著は1983年、翻訳は1987年) コペルニクスは1974年天文学者兼印刷者レギオモンタヌスの重要論文の出版予定目録を入手し…

日本の封建時代と近代の分岐点となった元禄時代はどういう政治変化があったのか?~『元禄時代』大石慎三郎(1970)

元禄時代 (1970年) (岩波新書) 大石慎三郎(1923-2004)は日本近世史の研究家。元禄は、日本の元号の一つ。貞享の後、宝永の前。1688年から1704年までの期間を指す。元禄時代とはどういう時代だったのか?(初版は1970年) 農民経済の変化 近世初頭に6割6分であ…

近代以前、東南アジアは胡椒、香辛料、絹・綿、染料を産む"豊饒の海"だった~『文明の海洋史観』川勝 平太 氏(1997)

文明の海洋史観 (中公叢書) 川勝氏は日本経済史、昨日の続き。(1997) 近代はアジアの海から誕生した。より正確にいえば、海洋アジアからのインパクトに対するレスポンスとして、日本とヨーロッパに新しい文明が出現した。農業社会から工業社会への移行という…

江戸時代の人は「江戸時代」という言葉を使ったか?~『文明探偵の冒険~今は時代の節目なのか』神里 達博 氏(2015)

文明探偵の冒険 今は時代の節目なのか (講談社現代新書) 科学の限界から歴史の本質まで。この時代が特別な「時代の節目」なのか、あるいはどういう意味で「時代の節目」なのか?(2015) 科学は既に地球を覆い尽くし我々は科学から逃れる事ができず、所与の…

江戸時代の人は「江戸時代」という言葉を使ったか?~『文明探偵の冒険~今は時代の節目なのか』神里 達博 氏(2015)

文明探偵の冒険 今は時代の節目なのか (講談社現代新書) 科学の限界から歴史の本質まで。この時代が特別な「時代の節目」なのか、あるいはどういう意味で「時代の節目」なのか?(2015) 科学は既に地球を覆い尽くし我々は科学から逃れる事ができず、所与の…

シンデレラはどうやって12時を知ったか?~『時計の社会史』角山 栄 氏(1984)

時計の社会史 (中公新書 (715)) 角山氏は経済史の研究家、時間をめぐる比較文化史(1984年) シンデレラ物語 シンデレラ (英: Cinderella) の童話は仏語の『サンドリヨン(仏: Cendrillon)』、『灰かぶり姫』あるいは『灰かぶり』に由来する。日本ではシャルル…

資本主義は17世紀オランダのニシン漁から始まった?~『ニシンが築いたオランダー海の技術史を読む』田口 一夫 氏(2002)

ニシンが築いた国オランダ―海の技術史を読む 田口氏は海事分野の研究者、16~18世紀、資源の乏しい小国オランダはニシン漁業で財をなし、欧州一の繁栄を誇った。オランダ黄金時代の栄光を海洋技術の発展とともに描く。(2002) ニシンが築いたオランダ オランダ…

「科学」という言葉はいつ生まれたのか?~『日本語の科学が世界を変える』松尾 義之 氏(2015)

日本語の科学が世界を変える (筑摩選書) 松尾氏は科学ジャーナリスト、日本の科学・技術が卓抜した成果を上げている背景には「日本語での科学的思考」が寄与している。科学史の側面と数多の科学者の証言を手がかりにこの命題に迫る。 (2015) 科学という概念…

「科学」という言葉はいつ生まれたのか?~『日本語の科学が世界を変える』松尾 義之 氏(2015)

日本語の科学が世界を変える (筑摩選書) 松尾氏は科学ジャーナリスト、日本の科学・技術が卓抜した成果を上げている背景には「日本語での科学的思考」が寄与している。科学史の側面と数多の科学者の証言を手がかりにこの命題に迫る。 (2015) 科学という概念…

我々が忘れてしまった事、200年前、世界は「木材の時代」だった。~『木材と文明』Jラートカウ(2013)

木材と文明 Jラートカウ氏はドイツの環境史学の研究者、ヨーロッパは、文明の基礎である「木材」をどの様に利用してきたか?(2013) 19世紀米国の機械は木材で出来ていた 木材は燃料であり、基本的な物質だった 木材は、数千年にわたって、もっとも重要な、い…

どうしてオリーブオイルが古代ギリシャの繁栄を支えたのか?~『スパイス、爆薬、医薬品、世界史を変えた17の化学物質』(2011)

スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を変えた17の化学物質 著者のルクーターとバーレサンは化学の研究者、身近な物質の化学物質から見た世界史。(2011年刊) オリーブ油 古代ギリシャの神話によれば、平和と知恵の女神アテナが槍で地面をつくとそれがオリーブの…

日本語は人造語だった~『日本史の誕生ー1300年前の外圧が日本を作った』岡田 英弘(1994年)

日本史の誕生―千三百年前の外圧が日本を作った (ちくま文庫) 岡田氏はアジア史の研究家、邪馬台国や倭国が、そのまま今の日本になったのではない。日本国の成立には、7世紀・中国の政治情勢の変化が大きく関わっている。(1994) 日本語は人造語だ どこの国に…

日本語は人造語だった~『日本史の誕生ー1300年前の外圧が日本を作った』岡田 英弘(1994年)

日本史の誕生―千三百年前の外圧が日本を作った (ちくま文庫) 岡田氏はアジア史の研究家、邪馬台国や倭国が、そのまま今の日本になったのではない。日本国の成立には、7世紀・中国の政治情勢の変化が大きく関わっている。(1994) 日本語は人造語だ どこの国に…

1543年コペルニクスの著書「回転について」は何部印刷されたか?~『誰も読まなかったコペルニクス~科学革命をもたらした本をめぐる書誌学的冒険』(2005)

誰も読まなかったコペルニクス -科学革命をもたらした本をめぐる書誌学的冒険 (ハヤカワ・ノンフィクション) ギンガリッチ氏は米国の天文学者、30年かけてコペルニクス「回転について」の初版本を調査 した。一つの著作に残された書き込みの跡を通じ、コペル…

人類の文化史は"わずか"5万年前から始まっていた~『5万年前に人類に何が起きたか?』

5万年前に人類に何が起きたか?―意識のビッグバン クライン氏は古人類学者、5万年前、人の脳の遺伝子レベルの変異が引き起こした「社会文化的爆発」についてどこまで分かっているのか?(2004年刊) 5万年前とはどういう時代だったか 5万年前頃、ヒトの個体群が…

60年前に提唱されていた、ユーラシア大陸の構造は今を見通す~『文明の生態史観』梅棹 忠夫 氏(1955)

梅沢氏は比較文化人類学者、ユーラシア大陸における諸文明の構造を大陸の環境という視点から分析する。本書は1955年の出版、戦後の政治体制が固まり、国際社会に再参加を始めた時期に執筆された。(文庫は1998年) ユーラシア大陸 アジア、ヨーロッパ、北アフ…

ジーンズはいつ生まれたのか?~『日本ジーンズ物語』杉山 慎策氏(2009)

日本ジーンズ物語 杉山氏はマーケティング論の実務家・研究家、副題は「イノベーションと資源ベース理論からの競争優位性」 ジーンズの起源 ジーンズの誕生には二人の起業家が深く関わっている。リーバイ・ストラウスとジェイコブ・デイビスである。・・・(…

私もあなたも"拡張可能な、柔らかな空間"に住んでいる~『空間から読み解く世界史:馬・航海・資本・電子』宮崎正勝(2015)

「空間」から読み解く世界史: 馬・航海・資本・電子 (新潮選書) 宮崎氏は世界史をテーマに著作を重ねる。「空間革命」という独自の歴史観から、五千年の人類史を一気に俯瞰! 乾燥地帯で始まった穀物栽培、騎馬に よる異文化統合、大陸を結ぶ大西洋支配、地球…

どうして「和」が日本の、という意味を持ったのか?それは古代日本人が最初に選んだ「国名」だった~『逆説の日本史 1 古代黎明編』井沢元彦(1993)

逆説の日本史〈1〉古代黎明編―封印された「倭」の謎 (小学館文庫) 井沢氏は作家、日本人の「わ」の精神のルーツは?1993年の文庫化 日本の国名は「ワ」という発音だった。 日本列島人(原住民)が、中国人に国の名を問われて、「我らの国」(つまり「ワ」とい…