毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

19世紀フランスのジャーナリズムと現代のコンテンツビジネスはどこが同じなのか?~『十九世紀パリ怪人伝』鹿島 茂 氏(2000)

かの悪名高き十九世紀パリ怪人伝 (小学館文庫)

 鹿島氏はフランス文学者、十九世紀パリのジャーナリズムはインターネットの世界につながっていた。(2000年)

 

19世紀のジャーナリズム

 

 

 

王政復古以来、ブルジョア階級が台頭し、ひらめきと才覚さえあればどんな下層の人間でも、あっという間に上層にはい上がることのできる金銭的な下克上の社会ができあがったからである。なかでも、成り上がりの意欲に燃えた青年たちを刺激したのは、ジャーナリズムの世界だった。なぜならインターネットの世界と同じく、19世紀のジャーナリズムでも、アイデアさえよければ、ごくわずかな資本でも事業が始められたからである。というよりも、アイデアに資本がついてきた。(3ページ)

 

フランス国営通信AFPの祖先アヴィス

現在の世界的通信会社AFPはシャルル=ルイ・アヴィスが1832年に設立した翻訳請負業がスタート。

アヴィス・グループは、一介の翻訳請負業者から始まって、約160年間の間に今日あるような大情報産業へと発展してきたわけだが、基本的には、企業の膨張拡大の過程は、すべて、この創業者の引いたレールの上に乗って行われてきたといっても過言ではない。(69ページ)

一見どんなささいな出来事でも、情報を得るのが人よりも速ければ、それは何らかの形で利益に反映するという事実を熟知していた。そのため、独立して(翻訳請負の)事務所を作ったとき、彼はそれをためらわずジャン=ジャック・ルソー街に置いた。なぜなら、ジャン=ジャック・ルソー街は、当時最も速い乗り物だった郵便馬車が外国や地方都市から、郵便物、新聞、旅行者などを運んでくる発着所のある通りだったからである。・・・ここに事務所を置いて、予約講読している外国の新聞や地方新聞を、到着するそばから翻訳したり記事にしてゆけば、パリのどの通信社よりも速く記事を配給できることは言うまでもない。客観的情報に対する新聞社の関心がいかに薄くとも、それが他の新聞を出し抜いた最新情報であれば、新聞社は確実にその記事を買う、一言でいえば、スピードは金になるのだ。こうしてアヴィスは到着したばかりのホット・ニュースを契約料の高い順に配給した。(73ページ)

ジャーナリズムの求めるもの、それは「差別化できる」情報

 

資本主義において、情報は商品である。アヴィス・グループは情報を速く入手し、情報を広範囲にディストリビューションする、ことをやった。

注目すべきは情報の持つ価値である。海外からの情報で一般的に大衆の興味を引かなくても、新聞社が他社との差別化に役立つのであればそこに商品価値が生まれるという。情報そのものは差別化が図れなくても、その配信に差別化が図れれば価値を生む事になる。これはジャーナリズムがスポーツやエンターテイメントなど様々なイベントを企画する本質を、我々に理解させてくれる。ジャーナリズムは情報の供給をコントロールできるコンテンツを求めているのである。そしてそれはインターネットのコンテンツビジネスにも受け継がれている。

蛇足

 

情報とは、そもそも他と違う、ということ。

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