毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ロシアから見るとアジアはどう見えるのか?~『プーチンはアジアをめざす』下斗米 伸夫氏(2014)

プーチンはアジアをめざす―激変する国際政治 (NHK出版新書 448)

下斗米氏はロシア政治論の研究家、ウクライナ危機が生んだのは、冷戦以来とも言われる深刻な米ロ対立であった。(2014)

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ロシアはエネルギー輸出国

 

ロシアは2011年の連邦予算のほぼ半分を石油・ガス関連産業からまかなってきたことからもわかるように、エネルギー資源を輸出することで経済を成り立たせている国である。しかもその半分は、ヨーロッパ市場向けであった。・・・エネルギー輸出大国であるロシアは、それまでの西側重視の貿易・輸出政策について、深刻な再検討を求められるようになったのである、(161ページ)

事実、東日本大震災が起こる前までは、日本のロシアへのエネルギー依存度は、石油は4%、天然ガスはほぼゼロだった。それが現在では、石油も天然ガスもおよそ10%をロシアから輸入している。もはやロシア抜きにして、日本のエネルギーは語れなくなってきているのだ。(196ページ)

ロシアはユーラシアに位置する

 

 

結局ロシアという国は、人口の八割がヨーロッパ部にいて、資源の八割はアジア部(=極東・シベリア)に存在するという、アンバランスが問題となっているのである。ロシアはいずれ、極東・シベリアに人口や国家の重点を移さざるを得ない。2008年のリーマン・ショック以降、西側諸国、とりわけヨーロッパでの経済的停滞がより鮮明になった。従来から存在していたロシア人の東方指向は、これを契機にますます強まっている。(173ページ) 

ウクライナ問題の本質は宗教

 

ウクライナ問題はロシアの起源や宗教と絡む問題をはらんでいるからだ。すなわち、およそ1000年前からつづくキリスト教における内部対立が、現代ウクライナにおいて噴出したのである。・・・(ロシアの)正教と(ウクライナウクライナ東方カトリック教会の)カトリックの対立があるからこそ、ウクライナ問題はここまで深刻化したのである。(190ページ) 

バルダイ・クラブ

 

プーチンは年に一度各国のロシア・ウォッチャーを集め、勉強会を開催する。そこでプーチン自ら参加者と議論を交わすという。(著者の下斗米氏は7回参加。)本書ではロシアの戦略をアジアに重点を置く、「脱欧入亜」だと説明する。

ロシアは連邦予算の半分を石油・天然ガスで賄う資源輸出国である。ロシアはユーラシア大陸の北に位置し、西にヨーロッパ、東にアジアと接する。ロシアとウクライナの兄弟関係は988年の「キエフ・ルーシ国」の成立にまで遡るという。この時間軸が底辺にあり、故にウクライナ問題は短期的な解決が望めないことになる。少なくとも新冷戦構造(欧米とロシアの対立)という視点では時間軸が短すぎることになろう。

ロシアの東の中心地はウラジオストック、ここは1860年に建設された。東方(ボストーク)を所有する(ウラジ)に由来するという。ロシアはシベリアの西から4000キロのガスパイプラインを設置しようとしている。アジアを安定的な市場に育てたいのであろう。ロシアが接する東アジアの国々は、中国、朝鮮半島、そして日本である。ウクライナの影響は東アジアにまで及んでいる。

蛇足

 

時間軸と地理的軸をどこまで広げられるか?

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