毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

優れたビジネス・プレゼンテーションは演劇と同じ、衆知を集めて創られる~『孫正義 奇跡のプレゼン』三木雄信(2011)

孫正義 奇跡のプレゼン (単行本)

三木氏は2006年までソフトバンクの社長室長、創業から30年余りで売上3兆円となったソフトバンクの快進撃は、孫正義のプレゼンテーションの力によるものと言っても言い過ぎではないだろう。(2011)

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 プレゼンテーションの原案はホワイトボードから始まる

 

 

孫正義のプレゼンテーションは、ホワイトボード上で最初の原案が作られている。・・・特に提携交渉のプレゼンテーションなどのように定型的でないものほど、こうした傾向が強い。このディスカッションには、膨大な時間が費やされる。・・・孫正義がプレゼンテーション案を練り始める際は、孫正義が社長室で何かを思いついて社長室の経営戦略担当が呼び出せることが多い。(75ページ)

 

プレゼンテーションは一人で作ってはいけない

 

 

プレゼンテーション案を練るときに、経営戦略担当が、孫正義の前で果たす役割は、プレゼンテーションの聴衆の代りだ。当日、聴衆が疑問に思うであろうことを想定して孫正義に質問を投げかけるのだ。・・・例えば、「孫社長の今考えていることでは、実務的なオペレーションが回らないのではないか?」といった疑問だ。・・・このような経営戦略担当の役割は野球のバッティングピッチャーのような仕事だ。バッティングピッチャーとは、試合に出る打者の練習のためにボールを投げるピッチャーのことだ。試合に出るピッチャーは、「打たれないボールを」を投げることが目標だが、バッティンピッチャーの目標は「一定以上のレベルで打ちやすいボール」を投げること。(78ページ)

 

なぜホワイトボードか?

 

 

それはホワイトボードが情報を共有しながら論議するのに適しているからだ。・・・孫正義が目指しているプレゼンテーションとは、社内外の衆知をディスカッションで結集してつくられたアウトプットなのだ。(81ページ)

 

ホワイトボードからプレゼンテーションが生まれる

 

孫正義のプレゼンテーションの準備ではホワイトボードを前にして、経営戦略担当を筆頭に社内の関係部署からキーマンが集められる。場合によっては10時間にもかけた議論がホワイトボードの前で行われる。その議論の過程は何枚ものホワイトボードプリントアウトに集約される。最終的にホワイトボードの議論の中からプレゼンテーションのページが選択される。

衆知を集める

 

会社のトップが行うプレゼンテーションの背後には会社という組織が控えており、そしてその先には観客が入る。孫正義はホワイトボードの前で組織と観客を集め議論を繰り返すことでプレゼンテーションを完成させる。

プレゼンテーションの目的が経営の方向に社内外を動かすことが目的とすれば社内外の視点から検討を加えることは至極当然だと気づく。

これはプレゼンテーションだけではなく、表現すること、文章から始まって絵画、演劇などに通じることでもあるのだ。表現は表現者一人によってなされるのではなく、それを支える人、観客があって成立している。我々も孫正義のプレゼンテーションつくり方を活用できる。

蛇足

 

プレゼンテーションも他者意識が必要

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