居心地が良くなったら”引っ越し”する~『変わり続ける―――人生のリポジショニング戦略』出井伸之氏(2015)
井出氏はソニーの元CEO,リポジショニングとは自分の置かれている環境、そして自らの価値観を変えること。
出井氏のリポジション
居心地のよさを感じたら、そこからあえて出ていく意識を持たないといけない。今がいいと思ったときこそ、次のステージに移るタイミングなのである。
考えた末に思い浮かんだのが、文系がまず行くことはない道を選ぶこと。当時は理系社員のキャリアだった「事業部長」になることだったのである。・・・業績がどん底まで落ちていたオーディオ事業部を、僕は選んだ。・・・「文系」から「理系」に行くのは、海外生活、すなわち異文化に身を置くという意味において、アメリカやフランスに行くのと同じだと考えた。・・・何もないところからスタートする。「リポジション」によって自分を追い込もうとしたのである。(104ページ)
そこにはまるで違う風景が広がっていた
それまでの本社スタッフから大きく変わり、「部門経営者」であるオーディオ事業部長となって、僕に見える景色は一変した。間接部門から事業部門に変わると、まるで違う世界が広がっていた。(5ページ)
オーディオ事業部はデジタル化によって技術がリセット
端的にいえば、光の技術であるコンパクトディスクに関して、社内には専門家がほんどいなかった。・・・新しい分野に入ったら、それについて知っている人間は極めて少ない。どういうことになるかというと、文系の事業部長である僕も、第一線の技術者も、みんなほとんど素人の集まりからスタートする、ということになる。これまでの「技術を知らない事業部長」という立場はあっというまに払拭されていったのである。(108ページ)
リポジションで自分を変える
あなたの中には、まだ多くの才能が眠っている。その才能を目覚めさせるには、新しい環境に身を置くことが重要だ。リポジションである。新しい場所に身を置くことだ。具体的には次の3つである。
- 職場の転換
- 日本を外から見る
- まったく新しいことに挑戦する
変わり続ける
出井氏は元ソニーのCEOを退任して10年経つが、今も「一生働き、一生遊ぼう」(iページ)という生活を送っている。
井出氏がソニーに入社したときの売上は100億円、CEO就任時には売上4兆円!だったという。ソニーも成長したがその中で出井氏は自らポジションを変える努力を行ってきたという。40代半ばには間接部門から事業部長として転出する。理系出身者指定席に文系が乗り込んだ。いくらソニーが成長期であったとはいえ、あり得ない人事を自ら断行した。転職が当たり前の今と違う時代、現在の転職に匹敵するぐらいの勇気があったのだろう。
出井氏が転出したオーディオ事業部はデジタル化の移行期、コンパクトディスクの商品化により赤字部門から急成長部門に転嫁、出井氏はその後のキャリアの切っ掛けをつかむことになる。
井出氏はこれをリポジショニング戦略という。新しい環境が自分の隠れた才能を発掘してくれる。そしてそれは今180度違えば違うほど得るものが多くなる。
職場の転換、日本を外から見る、まったく新しいことに挑戦する、一度にすべてはできなくても始められる。大切なことは居心地の良い場所から出ることである。
蛇足
新しい世界はすぐそこにある。
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