毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

歴史

ローマ帝国と近代国家はどこが違うのか?~『「ローマ史」集中講義』長谷川岳男(2011)

面白いほどスッキリわかる!「ローマ史」集中講義 (青春新書インテリジェンス) イタリアの小都市国家がなぜ“世界”を制覇できたのか?(2011) ローマの共和制 ・・・ローマの貴族たちが王を廃して集団指導体制を取ったのが共和制の始まりになりますが、平民も…

善人が良かれと思って悪行をする~『ヒトラーとトランプ 』武田 知弘氏(2017)

ヒトラーとトランプ (祥伝社新書) 20世紀最大の戦争犯罪人ヒトラーは、国民に待望されて登場した政治家で、当時のドイツには彼を迎え入れな ければならない深刻な事情がありました。(2017) ドイツのユダヤ人移民 近代ドイツは、工業化を推し進めるに当たっ…

産業革命以降のビジネスモデルは例外だった?~『 世界史を創ったビジネスモデル』野口 悠紀雄氏

世界史を創ったビジネスモデル (新潮選書) 歴史上の国家を“企業”、その活動を“ビジネス”として理解すれば、新たな視点が得られる。(2017) ローマ帝国の基本的な構造 ローマは、強力な軍隊を持ち、外敵の侵入を撃退しただけでなく、領土を広げてきた。それ…

”エデンの園”はどこにあったのか?~『ものがたり宗教史』浅野 典夫氏(2009)

ものがたり宗教史 (ちくまプリマー新書) 浅野氏は高校で教鞭をとる、宗教は世界の歴史や文化を彩る重要な要素のひとつ。(2009) エデンの園 メソポタミア文明は、紀元前3000年くらいに、ティグリス川・ユーフラテス川の下流地域にシュメール人が建設した多…

なぜ人は芸術を崇めるのか?~『芸術崇拝の思想―政教分離とヨーロッパの新しい神』松宮秀治氏(2008)

芸術崇拝の思想―政教分離とヨーロッパの新しい神 芸術崇拝がヨーロッパでいかにして生まれ、どのように広まっていったかを、近代国民国家の政治原理である政教分離とからめて論じていく。(2008) 宗教と芸術の交代 政教分離とは18世紀後半から19世紀にかけて…

500年前の宗教改革は宗教の自由競争を生んでいた~『ロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで 』深井智郎氏(2017)

プロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで (中公新書) 1517年に神聖ローマ帝国での修道士マルティン・ルターによる討論の呼びかけは、聖書の解釈を最重要視する思想潮流につながりプロテスタンティズムと呼ばれることになった。(2017) 新プロテスタ…

1970年大阪万博に学ぶ、”偉くない人”がビッグ・プロジェクトを成功させる方法~『歴史の使い方 』堺屋太一氏(2010)

歴史の使い方 (日経ビジネス人文庫 グリーン さ 3-6) 堺屋氏は評論家、よく知られている歴史上の場面を引き合いに出して、歴史の「使い方」を語る。(単行2004、文庫2010) 偉くない人が企てる 日本は、地位が高くもなければ大金持ちでもない人、いわば「偉…

写実絵画は科学として始まった~『 一六世紀文化革命』山本義隆氏

一六世紀文化革命 1 山本氏は科学史の研究家、16世紀、活版印刷は教会によるキリスト教の独占を打破した。そしてそれは他の業界にも広がっていった。(2007) 16世紀文化革命 中世における科学と技術の断絶状況を打ち破ったのは、芸術家や職人・技術者そして外…

誰も、組織を100%所有してはいけない~『 歴史からの発想―停滞と拘束からいかに脱するか 』堺屋太一氏(2004)

歴史からの発想―停滞と拘束からいかに脱するか (日経ビジネス人文庫) 堺屋氏は経済官僚出身の作家、中国史に学ぶ「勝てる組織」の作り方(単行は1983年、文庫は2004) モンゴル帝国 モンゴル帝国の出現は、世界史上、おそらく最大の大事件であろう。この帝国…

来世信仰たるキリスト教と資本主義はどうして共振するのか?~『「棲み分け」の世界史』下田淳氏(2014)

「棲み分け」の世界史―欧米はなぜ覇権を握ったのか (NHKブックス No.1222) 下田氏はドイツ史・ヨーロッパ史の研究家、かつて文明に程遠い周縁の地であったヨーロッパが武力によって世界を支配して以降、国際秩序に変化はない。彼らの飛躍的発展を可能にした…

人類はいつからコンクリートを使っているか?~『 コンクリートなんでも小事典』土木学会関西支部

コンクリートなんでも小事典―固まるしくみから、強さの秘密まで (ブルーバックス) コンクリートは 維持管理をきちんとすれば、構造物を100年もたせることも可能。(2008) コンクリートはなぜ固まるか セメントの原料には、主に石灰石と粘土、そして少量のけ…

250年前、チェス指しロボットが存在していた!?~『 謎のチェス指し人形「ターク」』T・スタンデージ氏(2011)

謎のチェス指し人形「ターク」 スタンデージ氏は作家、1770年、ウィーンで常軌を逸した発明がベールを脱いだ。通称「ターク(トルコ人)」というロボットは、世界第一級のチェスの指し手だった! (2011) チェス指し人形「ターク」の誕生 1769年の秋のある…

実は20世紀、日本はパワーゲームの主役だった~『優位戦思考に学ぶ 大東亜戦争「失敗の本質」』日下公人氏×上島嘉郎氏(2015)

優位戦思考に学ぶ 大東亜戦争「失敗の本質」 大東亜戦争における日本の「失敗の本質」とは何か? それは、「戦争設計のなさ(政治的に何を勝利とするかが不分明)」であったこと。我々はここから何を学ぶか?(2015) 優位戦思考 優位戦は、攻めることも守る…

将来自動車運転は乗馬の様なスポーツに戻るのかもしれない¥~『 サイエンス異人伝 科学が残した「夢の痕跡」』荒俣宏氏(2015)

サイエンス異人伝 科学が残した「夢の痕跡」 (ブルーバックス) 荒俣氏は作家、 発明品と発明者の伝記を読み解く(1995年単行、2015新書) 路上の交通機関 路上の交通機関は、19世紀後半に、ひとつの黄金期を迎えていた。まず、馬車であるが、パリやロンドン…

法則は短期間で変わらないから法則である~『すぐに未来予測ができるようになる62の法則』日下公人氏(2002)

すぐに未来予測ができるようになる62の法則 時代の変化を恐れるなかれ。変化があれば、チャンスがある。「未来予測の達人」が、予測のための「法則」を大公開(単行は2002年、電子版は2016) 今日の贅沢は明日の必需品 工業化とは文化の普及段階であって、創…

自ら少数者を選択できるか?~『大衆の反逆』オルテガ・イ・ガセット(1930)

大衆の反逆 (ちくま学芸文庫) ホセ・オルテガ・イ・ガセット(1883-1955)はスペインの哲学者。 1930年刊行の大衆社会論の嚆矢。諸権利を主張するばかりで、自らにたのむところ少なく、しかも凡庸たることの権利までも要求する大衆。(1930年、文庫は1999年…

近代化はいつ始まったのか?~『近代化の理論 』富永健一氏(1996)

近代化の理論 (講談社学術文庫) 富永氏は社会学の研究家、多面的に「近代化」をとりあげ、その起源を小封建領主割拠の中世から国民国家に統合された西洋の歴史に求める。(1996) 近代化 西洋史上での近代化はルネサンスと宗教改革と地理上の発見に始まった…

聖地を創る方法はあるか?~『聖地の想像力―なぜ人は聖地をめざすのか 』植島啓司氏(2000)

聖地の想像力―なぜ人は聖地をめざすのか (集英社新書) 植島氏は宗教人類学の研究家、宗教が変わり、国家が替わっても、聖地の場所は変わらない。なぜ聖地は何千年も移動せず、人は聖地をめざすのか?(2000) エルサレムという聖地 エルサレムというのは、ユ…

100年前、オスマン帝国は対外債務に押しつぶされた~『オリエント世界はなぜ崩壊したか』宮田律氏(2016)

オリエント世界はなぜ崩壊したか: 異形化する「イスラム」と忘れられた「共存」の叡智 (新潮選書) 宮田氏は現代イスラム社会の研究家、中東100年では100年前、何があったのか? オスマン商業の発展 オスマン帝国の拠点であるアナトリアは東アジア、インド中…

武士は天下泰平250年間何をしていたか?~『げんきな日本論』橋爪大三郎氏×大澤真幸氏(2016)

げんきな日本論 (講談社現代新書) 歴史上の出来事の本質を、社会学の方法で掘り下げる。(2016) 江戸時代250年とは何か? この(徳川幕府)は長く持っているけれど実は根本的なウィークポイントがあった気がします。・・・安定しているがゆえの、幕藩体制の…

キリスト教世界にとって、イスラエルとは何なのか?~『イスラエルとは何か』

イスラエルとは何か (平凡社新書) ラブキン氏はロシア史・ユダヤ史の研究家、近代国家主義の権化たるシオニズムによって建国されたイスラエルとは何か?(2012) シオニズムは、イスラエルの地に故郷を再建しようとするユダヤ人の近代的運動。「シオン」(エ…

登山はいつ始まったか?~『観光大国スイスの誕生: 「辺境」から「崇高なる美の国」へ』河村英和氏(2013)

観光大国スイスの誕生: 「辺境」から「崇高なる美の国」へ (平凡社新書 (692)) 河村氏は西洋建築史の研究家、かつてスイスは人々が恐れる山々に囲まれた未開の地にほかならなかった。スイスはいかにして「発見」されたのか。(2013) スイスを観光立国にした…

19世紀フランスのダンディーには馬車が必需品だった~『馬車が買いたい!』鹿島茂氏(2009)

馬車が買いたい! 鹿島氏はフランス文学の研究家、十九世紀フランス小説の中で、青雲の志を抱いてパリへやってきた青年たちには、共通した願望があった。「馬車が買いたい!」(2009) 19世紀のダンディー 『パリで大きな顔をしようと思ったら、馬が3頭に昼間…

美術館はいつどこで生まれたか?~『芸術のパトロンたち』高階秀爾氏(1997)

芸術のパトロンたち (岩波新書) 高階氏は西洋美術史の研究家、芸術の保護者たるパトロン、王侯貴族の退場は何をもたらしたか?(1997) 美術館の誕生 誰でもが容易に訪れることのできる美術館という思想は、博物館や『百科全書』の理念と同様に、知識の拡大…

歴史に学ぶ、とはどういうことか?~『 二十世紀をどう見るか』野田宣雄氏

二十世紀をどう見るか (文春新書) 野田氏はドイツ近代史の研究家、社会主義の挑戦を退けた20世紀の主役・国民国家が、いま解体の危機に瀕している。(1998) 20世紀は帝国から帝国へ 20世紀が幕を開けたとき、世界にはまだいくつかの帝国が存在していた。…

石器時代から現代まで、人類戦争史を俯瞰してみる~『 戦争と革命の世界史』神野正史氏(2016)

戦争と革命の世界史 (だいわ文庫 H 320-1) 神野氏は予備校講師、”受講生から圧倒的な支持を得る神野先生の講義は、まるで映画を観ているような臨場感と興奮!” (2016) 人類戦争史俯瞰 人類の戦争史をもう一度簡単に復讐してみると、石器時代から19世紀まで…

資本主義の根本”セイの法則”とフランス革命の関係から見えるもの~『 株式会社の終焉』水野和夫氏

株式会社の終焉 株式会社、厳密にいえば、(新しい価値の創出ではなく)現金配当(だけを)をしている株式会社に、残されている時間はあまりない。(2016) 自動車と家電 この(自動車と家電の)二つの産業で不祥事(ドイツのフォルクスワーゲンと日本の東芝…

なぜ浅田氏は昭和初期を舞台に犯罪小説を描き続けるのか?~『天切り松 闇がたり 5 ライムライト 』浅田次郎氏(2016)

天切り松 闇がたり 5 ライムライト (集英社文庫) 帝都東京の夜盗の大親分、安吉一家が動き出す! 仁義を重んじる伝説の夜盗たちの痛快ピカレスクロマン。(文庫化、2016) 軽井沢から上野に向かう上信越線にて 高架線上をひた走る列車には、赤い陽足が流れ込…

そうか、音楽を”真面目に”聴かなくてもいいんだ~『聴衆の誕生 - ポスト・モダン時代の音楽文化』渡辺裕氏(1989)

聴衆の誕生 - ポスト・モダン時代の音楽文化 (中公文庫) 渡辺氏は文化資源学の研究家、クラシック音楽はいつから静かに真面目に聴くものになったのか?(単行は1989、文庫は2012) 18世紀の演奏会 18世紀の演奏会は、基本的に社交の場であった。そこには音楽…

通貨は誰が作るのか?~『通貨の日本史 - 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで 』高木久史氏(2016)

通貨の日本史 - 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで (中公新書) 高木氏は日本の通貨史の研究家、どうして中世日本は中国の通貨を使ったのか?(2016) 中世日本では中国の銭が使われる 12世紀から16世紀までの中世日本社会は、外国の青銅貨、主に中国産の銭…