毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ローマ帝国と近代国家はどこが違うのか?~『「ローマ史」集中講義』長谷川岳男(2011)

面白いほどスッキリわかる!「ローマ史」集中講義 (青春新書インテリジェンス)

イタリアの小都市国家がなぜ“世界”を制覇できたのか?(2011)

 

ローマの共和制

・・・ローマの貴族たちが王を廃して集団指導体制を取ったのが共和制の始まりになりますが、平民も含む市民団体全体のための体制ということを建前として、新たな社会を立てることになりました。・・・(王の権力を継承したコンスルを頂点とする)公職者に加え、有力者たちからなる諮問機関である「元老院」、さらに公職者の選挙や国全体に関わる和戦、重大事件の裁判などを行う市民総会である「民会」、という大きく分けて3つの要素からローマの共和制が運営されることになります。(40ページ)

世界市場で理想的な国制

・・・一人の支配者を頂く「王政」、少数の高貴な者たちによる統治である「貴族政」、そして民衆が実験を握る「民主制」です。これらの制度はそれぞれ安定性が乏しいため国内情勢が混乱する傾向が強く、それがコミュニティの発展を阻み、逆に対外的な弱みとして他国の侵略を許す要因であるとされました。そこでこの不安定性を除く体制だと思われたのが、「混合政体」なのです。・・・具体的に言えば、王政的要素として権力の強い公職者・・・貴族的要素として確固たる権威のある評議会機構、・・・重要な案件を決議する市民からなる民会が、おのおのバランスよく配置された制度のことです。この制度から権力の分散という着想を得てモンテスキュー三権分立を唱えて、我々の(日本国)憲法にも取り入れられている・・・。(64ページ)

アメリカの議会とローマ帝国

上院をローマの元老院(senetus)に倣ってセネト(Senete)、上院議員をセネター(senetor)と呼びましたし、パンテオンに代表されるローマ風のドーム型デザインで建設された国会議事堂を、ローマの中心地カピトリウム(Capitolium)の丘にちなんでキャピトル(Capitaol)と読んでいることが象徴しています。(246ページ)

 

「ローマ史」集中講義

アメリカの連邦共和制はローマ帝国の共和制を参考にしていると言われる。ローマ帝国の公職者の頂点にはコンスル=統領、大統領、執政官が位置する。最高の権力を有する職で、任期制でローマを運営する命令権を与えられる。大枠でとらえればアメリカの大統領がそれを模していると言えるであろう。西洋文明の根底にはローマ帝国の文化が存在すると考えればある意味当然ではある。

しかし一方で大きく違う点もある。当時のローマ帝国を運営する官僚はわずか300名程度の小さな政府であった。アメリカに限らず、現代の国家は肥大化し続けている。三権分立をしていても三権の組織が肥大化していくとことの弊害は大きい。ローマ帝国が1000年続いた一つには組織の肥大化を避ける仕組みがビルトインされていたことにあろう。ローマ帝国にとって奴隷制が前提だったにしても、現代の生産力を持ってすれば奴隷制が無くとも社会は維持できる。

我々は高い生産性を築くことに成功した。しかし一方でそのメリットの多くを組織の肥大化で相殺されているのかもしれない。我々の住む大きな政府は100年にも満たない経験しかない。

蛇足

ローマもアメリカも紋章は鷲

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