キリスト教世界にとって、イスラエルとは何なのか?~『イスラエルとは何か』
ラブキン氏はロシア史・ユダヤ史の研究家、近代国家主義の権化たるシオニズムによって建国されたイスラエルとは何か?(2012)
シオニズムは、イスラエルの地に故郷を再建しようとするユダヤ人の近代的運動。「シオン」(エルサレム市街の丘の名前、英語ではザイオン)の地に帰るという意味である。
イスラエルと西洋
西洋がイスラエルに差し伸べてやまない支持の背景には、実際に移住を目的として生まれてきたこの最新の植民地国家が、いくつもの点で、かつてイギリスとフランスが世界中に所有していた植民地の歴史にもつうじる深いヨーロッパ的性格に根差したものであるとの認識が横たわっています。「ユダヤ国家」としてのイスラエルの性質そのものによって・・・脱植民地化に向かう世界の流れを逆戻しにし、ひいては西洋列強による中東の再=植民地化のスムーズな進行さえ期待できるようになるのです。・・・イスラエルが、必ずや東洋からやってくるに違いないとされた仮定的脅威から西洋の身を守る要塞としての役割を自負・自任する構図が生み出されたのです。(14ページ)
16世紀の宗教改革時代、・・・ユダヤ教徒を“聖地”に集合させることがキリスト教世界にとって最重要の意味をもっているのではないか、という考えが一気に広がりを見せます。ユダヤ教徒がこぞってキリスト教徒に改宗することで黙示録の実現とキリスト教の最終的勝利が早められ、イエス再臨の条件がそろうことになると考えられたのです。(50ページ)
シオニストたちは、地球上のある一郭を後退地帯とみなし、そこで待ち望まれているのはもぱらヨーロッパ人入植者たちによる“贖い(あがない)”であると判断した上て、その土地に近代性を移植するという野心的なヴィジョンを実現しようとしたのです。その意味においてイスラエル国は、今日なお、西洋の植民地主義を特徴づける強引な近代化の力業をそのまま体現し続けているといえるでしょう。(63ページ)
1917年バルフォア宣言が起草
1917年、イギリスが、当時、オスマン帝国領だったパレスティナの占領に乗り出す直前のことでした。タイプライター用紙で1枚にも満たない短い文書ですが、そこにはキリスト教の信仰箇条とヨーロッパ列強の帝国的野望とを抱き合わせにする数世紀来の伝統がはっきりと映し出されていました。(53ページ)
ユダヤ人とイスラエル
「シオニストたちは、1世紀をかけて世界のユダヤ教人のおよそ半数をパレスティナの地に移住させるという荒業をやってのけました。」(15ページ)
イスラエルとは何か?
今やイスラエルは中東に君臨する経済大国であり軍事大国でもある。私は当時の大英帝国が戦争への協力を取り付けるためにユダヤ経済界に対し協力を取り付けるためにバルフォア宣言が行われたと学習した。バルフォア宣言が支援を約束したシオニズムは実はキリスト教の立場からも望まれていたものであったと知る。中東のアラブ地域の中に存在するイスラエルは、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖地であるエルサレムに首都を置き“西洋の要塞”として存在している。どうして西洋はイスラエルを支持するのか、地政学的な重要性に改めて気づく。
蛇足
イスラエルの人は800万人、一人当たりGNPは日本より高い
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