毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

本は著者、読者、そして編集者によって作られる~『働く、編集者―これで御代をいただきます。』加藤 晴之 氏(2007)

働く、編集者―これで御代をいただきます。

加藤氏は編集者、最近では「佐治敬三開高健 最強のふたり」(北康利さん・著)を担当、

編集者という仕事

 

編集者の仕事とは、まさに異能の人々と出会い、そういう人々の創作活動の現場で、彼らの傍らに寄り添い補佐するということに尽きる。(17ページ)

情報を発信するには、情報(事実)を取材してインプットし、その情報を分析・調査をし、発信者の意図や考えにそって情報を組み直してから、最後に、情報の受け手(読者)に伝わりやすくするために加工する、つまり編集=editしなければならない。(18ページ)

お金を頂戴する、ということは読者が買いたくなる商品=書籍・雑誌を作ることができる編集者、ということになる。つまり、その雑誌や書籍のお代(定価)に見合う価値があるコンテンツを編集できるかどうかが編集者の腕前となる。(19ページ)

編集者とタイトル

 

雑誌や書籍という商品をより多くの読者に届けるためには、うまいタイトルが必要ですし、編集者にはコピーセンスが求められます。作家や学者、ルポライターといった書き手の方々は、当然タイトル案をお持ちですが、ご自身の作品世界に入り込みすぎていて、読者との距離感を喪失しているケースがあります。そうしたとき、書き手の方に適切な助言や提案をするのはとても大切なことです。編集者は読者と書き手の距離を測らなければなりません。

レストランの屋号や店構え

 

書き手が丹精こめて書いた作品を、読者に読んでもらうための「装置」としてのタイトルは、レストランで言えば、屋号や店構えのようなもの。いかに美味しい料理を出すお店でも、店構えが美味しいメニューを彷彿とさせなければ、お客さんは入ってきません。オーナーシェフである「書き手」の方々に、マネージャーである編集者は的確なアドバイスができるかどうかーー。

それでは書き手とは?

 切り口とは、すなわち、(書き手の)あなたが事実の本質に焦点を当てるための「視点」です。この視点さえ発見できれば、あとは、どれだけ生々しくレポートするのか、取材の緻密さと、その取材メモを生かしてディテールを積み重ねて書いていく。(146ページ)

「切り口」とは仮説のことです。自分自身が感じたこと、考えたことは・・・言い切らなければなりません。・・・「ファクト」に自分の思いを語らせることによって読者に伝えるように。(159ページ)

編集者は猛獣使いである

 

著者は編集者を猛獣使いと比喩する。異能の人、書き手を対峙し、時にアドバイスし、時にムチ(!)をくれる。書き手はそのアドバイスに従ってより大きな声で吠えるのである。そして、観客は猛獣ショーをより愉しむことができる。本は著者と読者と、そして編集者によって作られる。猛獣使いはそのことをよく教えてくれる。

蛇足

 

編集者は書き手と、書き手は編集者と、信頼関係を作らなければいけない。

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