毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

電子書籍は出版全体の9%弱、アメリカの5年遅れ~『ルポ 電子書籍大国アメリカ』大原ケイ(2010)

ルポ 電子書籍大国アメリカ (アスキー新書)

 大原氏は出版エージェント、本の電子化で読書習慣、思考の仕方、出版社・著者・読者のあり方はどう変わっていくのか? 本書は2010年の出版、アメリカの電子書籍黎明期の状況を知りたくて本書を手にとる。(2010)

電子書籍の今

9月13日の日経新聞の報道によれば電子書籍は2014年度1411億円(前年度比+39.3%増)に達した。日本の出版業界は1兆6000億円なので8.8%を占めることになる。

一方米国では約1兆5000億円(前年比+6.9%)、うち電子書籍市場規模(出荷)は約3000億円(前年比+44%増)。つまり、米国において電子書籍は、一般書籍全体に対して約20%を占めている。

2010年米国の電子書籍のシェアは10%

2010年にはそれが(電子書籍)10%に達するかしないか。・・・もともとゼロから少しずつ増えていくものだから、それだと前年比の成長率で言えば130%増Rという華々しい数字になる。(626ページ)

衰退するマスマーケット・ペーパーバック

紙の本のフォーマット(版型)でいえば、ここ数年、マスマーケット・ペーパーバックは苦戦を強いられている。・・・・かつては、空港の売店やドラッグストアなど書店以外のところにも並んでいる。売れ筋の安い本として数字を伸ばしていた時期もあった。したがって紙質はかなり悪く、すぐに黄ばみ、印刷も雑だ。・・・ロマンスとSFこそ、電子書籍が伸びてマスマーケットが苦戦しているジャンルでもある。つまり、今までの質のよくない紙で大量消費に対応し、廉価で売られていた本が、電子化で無駄なく、効率よく読者の手に渡るようになったということだ。エコの観点からも正しい進化と言わざるをえない。(29ページ)

読書は孤独な作業か?

キンドルが最新のソフトウェアアップデートで加えてのが、アンダーライン共有機能。同じ本を読んだ人他の人が、どの部分に下線を引いたかがわかる。

要するに感動の共有だ。これこそが、紙の本では実現し得なかった新しい読書体験の一つとなるであろう。(37ページ)

本は読まれてこそ価値がある

有名な哲学の命題で、「誰もいない森の中で、木が倒れたとしたら、本当に倒れた音がしたといえるのだろうか?」というものがある。本を作っても、誰にも読まれなかったとしらら、それは本当に出版されたといえるのだろうか?(103ページ)

出版の未来

これからの時代、本屋に行って、紙の本をじっくり読むのは贅沢なことになっていく。それに見合う支出をする覚悟がなければ、どんどん電子書籍が増え、紙の本の選択が狭まってくるのは避けられない。読みたいけれど、ちょっと高いから文庫になるまで待とう、と思っていたら永遠に文庫本にならないタイトルも増えるだろう。(170ページ)

日本の電子書籍は米国の5年遅れ

 日本の電子書籍は約9%となった。2010年の米国とほぼ同じ水準である。驚かされたのは日米で出版業界の市場規模がほぼ同等の大きさであることだ。もっとも日本は急速に市場が縮小した結果なので、日本は米国に比べ人口対比概算で1.5~2倍のシェアに該当する。

 本書の描く未来は、「紙の本をゆつくり時間をとって読むこと」が贅沢になる未来である。米国では20%にまで達成したことを考えると、紙の本はますます贅沢になっているのであろう。

私は電子書籍によって、読むことのできる書籍のタイトルが増えることを望む。

本は読まれてこそ価値があるのだから。

蛇足

読書は贅沢だからこそ価値がある。

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