毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

エントロピーで地球の生命を眺めてみる、それはコーヒーに入れたミルクの"かがやき"~『宇宙に果てはあるか』吉田 伸夫氏(2007)

宇宙に果てはあるか (新潮選書)

 吉田伸夫氏は専攻は素粒子論(量子色力学)。本書は宇宙に関する科学史、文系でも理解できる様に工夫されている。12章「われわれはどこへ向かっているのか」を読んで始めて宇宙のエントロピーが理解できました。(2009年刊)

 

 地球表面のエントロピーは減少

 

 地球は、小さなエントロピーを受取って、大きなエントロピーを放出しているのである。これが、地球表面でエントロピーが減少できる理由である。生命の発生には、エントロピーの小さい太陽光が不可欠である。地球表面に限れば、エントロピーが減少する事も可能である。(196ページ)

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高い方の温度から低い方の温度に熱が移動し、均一を目指してエントロピーは増大していく。太陽系の温度は太陽>地球>宇宙空間となり、温度の比率からエントロピーは減少を続ける。(本書より図解化)

宇宙全体のエントロピーは増大

 

 

しかし、太陽、地球、宇宙空間を併せたシステムを考えると、そうはならない。地球から流れだした熱は、宇宙空間のエントロピーを増大させる。・・・太陽系のようなシステムではエントロピーは圧倒的な勢いで増大し続けているのであって、惑星表面で小実エントロピー減少の過程は、限られたでみられるささやかなエピソードでしかない。(196ページ)

 

地球内部のエントロピーは?

 

 重力が作用するシステムでは物質が均一に広がっているほうが不自然でエントロピーが小さく、物質の凝集は、エントロピーが増大する過程である。(205ページ)

 

我々はコーヒーに落したミルクの一滴

 

 

我々が生きているのは、宇宙史のなかでみれば、エントロピーが急激に増え続けている初期の華々しい期間にあたる。それは、熱いコーヒーに落した1敵のミルクが落下直後のわずかな間だけ美しい模様を描くのにも似た、短くはかない一時期である。しかし、そこに短い生を得た人類が、宇宙全体の誕生から死にいたる壮大な歴史を垣間見ることができたという事実は、決して無意味なことではないだろう。(207ページ)

 

エントロピーとは起り易さ

 

エントロピーを「自然に実現される確率の大きさを表す量」と定義し、コーヒーに例えてみる。コーヒーにミルクを垂らせば美しい模様が現れるが、時間と共に混ざって縞模様が消えていく。コーヒーのエントロピーは増大していく。ミルクは一瞬の間だけ美しい模様を描く事ができる。それが太陽系であり、地球であり、我々生命である。宇宙サイズで見ると地球47億年はコーヒーの模様の様にはかないものであった。

地球とエントロピー

 

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エントロピーとは「「自然に実現される確率の大きさ」を表す指標である。コーヒーとミルクは混ざり合い、茶色になるのが自然であり、その状態でエントロピーは最大となる。それでは引力のある地球内部ではどうなるか?地球内部では冷えている過程で構造ができる。比重の違う物質が分離をしていく方が自然だからである。構造が生まれたとしてもエントロピーは増えている。我々生物は地球誕生以来、地表にあって簡単なものから複雑なものに進化してきた。生命はコーヒーに入れた「ミルクのきらめき」の様にはかないが故に美しいものだと教えてくれる。

蛇足

 地球47億年は一瞬である

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