毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ニワトリは1年に何個タマゴを産むか知っていますか?~『牛乳とタマゴの科学』酒井 仙吉 氏(2013)

牛乳とタマゴの科学 (ブルーバックス)

酒井氏は動物育種繁殖学の研究家、ニワトリは幾つのタマゴを産んでいるのか?(2013年刊)

 
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ニワトリは1万年前タイの赤色野鶏から分かれた

 

 

祖先探しはニワトリに似ている野鶏を探すことから始まった。・・・東南アジアにいるのではと考えた。候補は赤色野鶏、灰色野鶏、セイロン野鶏、青襟野鶏の4種であった。いずれもキジの仲間である。・・・ニワトリの祖先となる野鶏を飼うのは人の歴史では古いことだろうが、突然変移の確率からすれば1万年前などは昨日今日のことである。そこでミトコンドリアDNAの遺伝子情報をたよりに、家畜化されたニワトリ、それに4種類の野鶏の枝分かれ図がつくられた。赤色野鶏のなかにニワトリとの一致度の高い固体がタイにいた。その結果、遺伝子上で赤色野鶏が最も近いことが判明した。(112ページ)

現在のニワトリは年間280個のタマゴを生む

 

 

 

抱卵を始める前にタマゴを巣から1個取り去ると新たに1個生むのだ。ニワトリは5個程度までは数えられるようで、5個を4個にすると1個生むが、5個以下だと1個とっても生まない。抱卵を始めるときのタマゴの数はほぼ一定していることから盗みを繰り返すと多くのタマゴを産む事になる。この盗んだタマゴを食べればよいのだ!ほとんどは途中で気づき産卵を中止するが、なかにはノンビリした個体もいたようだ。この様な個体を選抜sれば、最後には相当数のタマゴを産むことになる。この繰り返しで産卵能力を高めた。それでも長い間1羽の産卵数は年40-50個だった。。戦後しばらくすると年間の産卵数は100-120個程度になった。

 

毎日タマゴを産めるか?

 

365個は不可能だが330個なら可能だと答えることにしている。なぜならタマゴが完成するのに24~25時間かかるからだ。ところで330個産んでも商品価値がなければ無意味である。タマゴができる過程で最も時間がかかるのが卵殻形成である。・・・産卵数で選抜すると卵殻を薄くすることで産卵間隔を短くし、(消費者に渡るまでの間に割れる可能性が高まる。)年間の産卵数280個、その上全部が頑丈なタマゴとなればニワトリの生理にかなった産卵個数ということになる。(139ページ)

ニワトリがタマゴを沢山産むようになった理由。

 

人間はニワトリのある一定の個数になると抱卵を始める習性(就巣性)を利用した。一定の個数に達しなければいつまでも産卵するからである。著者は就巣性はニワトリの少数の遺伝子に依存している、だからこれを避けさせる事ができたと説明する。それでは卵は誰が孵化させるのは?20世紀中頃電気孵卵器の登場によってニワトリはもはや抱卵をしなくて済む様になっていた。人間とニワトリの分業である。

ニワトリがタマゴを沢山産むようになった本質的理由

 

著者はニワトリの品種改良、飼育の改善は人間の観察と改良の結果であると説明する。特に米国での品種改良の速度が速かったのだがそれにはコンピュータを活用し品種改良のスピードが向上した事を指摘する。人間はニワトリとの分業を高めた。その結果が280個であった。朝の食卓の玉子は、色々な事を教えてくれる。

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たまごのデータ | たまごの知識 | キユーピータマゴ株式会社

 蛇足

日本人は平均330個の“玉子”を食べている。(世界一)

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