毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

売れないモノを作っていないか?~『トヨタの強さの秘密 日本人の知らない日本最大のグローバル企業』酒井嵩男氏(2016)

トヨタの強さの秘密 日本人の知らない日本最大のグローバル企業 (講談社現代新書)

 酒井氏は人材・組織開発のコンサルタント、世界中が学ぼうとしているトヨタのの製品開発の仕組みを丹念に解き明かす。(2016)

 

 

TPD:Toyota Production Development:トヨタ流製品開発とは「売れるモノを開発する手法」

TPS:Toyota Production System:トヨタ生産方式とは「売れる時に売れる数だけ売れる順番に作ること」

 

TPDとTPSの決定的違いは何か?

TPDでは何を作るかということがあらかじめ決まっていないことである。また何を作るかを決めたとしても、実際にできるかどうかは企画段階ではわかっていないことの割合が多い。つまり「既知の領域」よりも「未知の領域」が多い。反対にTPSでは、入り口(設計情報)が与えられ、出口(実際の製品)は決まっているので、アタマを使ってカイゼン・改革すればよいのは入り口と出口の間の生産プロセスである。(196ページ)

パソコン・スマホはどうして儲からないのか?

パソコンやスマホの設計情報は、すでにインテルやクワルコムのような会社を中心に設計済・企画済であり、日本の家電メーカーはその転写のみ担当している。儲からないのは当たり前である。(194ページ)

ある大企業の悩み

大企業工場幹部「うちの製造工程はどこにも負けていない。完璧なのですよ。でも解決できない問題が一つだけあるんです。それは製品が売れないことなのです。」

酒井氏「売れないものを高品質で作っても意味ないじゃないですか。売れないものを作るのは犯罪ですよ」(252ページ)

トヨタの強さの秘密

トヨタと言えば、カンバン方式によるコスト削減、TPSが有名である。しかし今や製造業でTPSをやれるのは最低条件でありそれだけでは差はつかない。本書によればグローバルに言えばTPD、トヨタ流製品開発の方が注目され、リーン経営=売れないモノを作る無駄を省く経営、として知られているという。

トヨタハイブリッドカーの系譜をたどっていくと1902年ポルシェが開発したハイブリッド消防車に行き着く。トヨタは1997年プリウスとして商用化させた。100年前にはアイデアがあったが実現できなかったものを実現したのである。

商品、サービス、もっと広げればビジネスにおいて何をやるか、これこそが最大のテーマであることに気づく。我々は日常の中で、何をやるか、を忘れてしまう危険性にある。トヨタの開発したハイブリッドカーが唯一の正解であった訳ではなく、それは今も変わらない。トヨタは何も決まっていない所からハイブリッドカーを構想し商業化に成功した。振り返ってみれば1本の道に見えても、前を向けば荒野が広がるばかり。それでも前に進んだ者のみが大きな成功を収める。

蛇足

売れないモノを作っていないか?

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