これからやろうとしていることに本当に意味があるか?~『トヨタが実践する価値創造の確かな進め方 リーン製品開発方式』A・ウォード氏(2014)
A・ウォード氏は米軍勤務を経て開発プロジェクトの管理手法の研究を行った人物。自動車において短期間、低コストと高い競争力を持つ製品開発をどうやって行うか、についての専門書。(2014)
無人陸上車の検討
何年か前に、私は陸上の無人陸上車(UGV)計画のレビューをした。私はそのどれもが戦術的に有用なシステムを生み出さないと予想し、実際にその通りであった。なぜかというと、一つの理由は物理法則のためだ。UGVが意味を持つには、有人車両より小さくなければならない。車両が人を入れるだけ大きければ、人を乗せてその性能を上げることができるからだ。
しかし、車両が小さくなればなるほどオフロードに散らばる障害物をつぶして進む能力が低下する。物体の強度は寸法の2乗に比例して増えるのに、(障害抵抗力を強くする)重量は3乗に比例して増えるからだ・・・重量との関係で、小型車は大型車よりも障害に弱い。だからタンク(戦車)は、小型車では通過できないような地形でも突き抜けることができる。
もっとも重要な質問を定義する
良いシステム設計者なら、小型の有人車両で無人車両を検証した実地試験から始めただろう。陸軍の技術専門家は「無人陸上車を製作できるか」という質問を設定した。しかし。それよりも重要な質問は「無人陸上車は役に立つか」という視点である。(158ページ)
リーン製品開発方式
製品開発を効率的に進めるためにどうしたらいいか?突き詰めると製品開発によって新たにどういう価値創造を行うか?、ということに突き詰められる。それは無人陸上車の検討において、顧客=前線の軍隊において「無人陸上車は役に立つか」という質問を行うことである。無人陸上車が役に立たないのにそのプロジェクトを進めることこそ無駄なことはない。
これは製品開発だけでなく、我々の行動のすべてで必要な問いかけ、と言える。私のやっていることに何の意味がるのか?私が給料を貰えるから、ではなくそれが顧客の役に立つか?という質問を繰り返すことである。
リーン製品開発はトヨタの開発方式から多くを学んでいる。いわゆるカンバン方式=ジャスト・イン・タイムは必要なものを必要なときに用意すること。逆に言えば必要の無いものを作ることは究極の無駄であり、それを排除しようとする思想である。
今やっていることは今本当に必要なことか?上司ではなく、顧客の役に立っているか?どうやったら顧客にもっとよい付加価値を提供できるか?
意味のないことをやる以上の無駄はない。
蛇足
究極の質問の答は時に残酷、である。
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