高級電気自動車メーカーテスラ社の特許オープン化~すべては「夢」から始まる
テスラ、特許オープン化を表明:特許はイノヴェイションを阻害する?
電気自動車メーカー「Tesla Motors」が、所有する特許の「オープン化」を表明した。現行の特許システムはイノヴェイションを阻害していると彼らは主張する。
テスラ、特許オープン化を表明:特許はイノヴェイションを阻害する? « WIRED.jp(2014年6月16日)
電気自動車と特許で思い出す事,1900年の米国のガソリン自動車の特許係争
事件は1900年から1911年まで続いた。一自動車工業資本(Electric Vehicke Co.)が特許独占(とくにセルデン特許)を武器にして部門全体を制覇しようとする独占政策を強行した。
セルデン特許とは1895 年1月5日付で登録発効の、自動車用圧縮型ガソリンエンジンの構造および斜体構造におけるエンジンと燃料タンクの分離の使用に関するパテント。
Electric Vehicke Co.はガソリン車ではなく電気自動車
Electric Vehicke Co.は全米で「電気」自動車タクシー運送業を独占していた。1900年までに更に電気自動車の生産、運輸、更にはその動力たる蓄電池生産に及ぶWCホイットニーの支配体制が構築されつつあった。ところがガソリン自動車の優位性が着目されるとかねてより買収・保有のセルデン特許を使ってガソリン自動車メーカーに対し特許係争を仕掛け、ロイヤリティを請求した。WCホイットニーは電気自動車の専業でありガソリン自動車への生産転換を行おうとはしなかった。「ようやく発展の段階についたガソリン自動車業について、独占的支配を確立するため」にのみ行われたと論評。岡田賢一氏論文(1963)より抜粋
Kyoto University Research Information Repository: セルデン特許とElectric Vehicle Co.
スタンフォード大を2日で辞めてペイパルを興して資金を得、ポルシェより速い電気自動車をつくり、民間で初めて国際宇宙ステーションドッキングに成功。電気自動車、太陽光発電で環境を守り、宇宙ロケットで火星を目指す。今世紀、世界No.1「発明家」。
マスク氏のもう一つの夢、宇宙船の名前はドラゴン、Puff the magic dragonに由来
イーロン・マスク氏の見ている先は「持続可能な輸送手段とエネルギー」
子供の頃から本の虫でSF小説などを読みふけったイーロン・マスクは、大学生になると「未来の世界や、人類の将来に大きく影響する問題は何であろう」とよく考えるようになったという。そして、「持続可能な輸送手段と、持続可能なエネルギーを作り出すこと、これが非常に重要だ」という結論に辿りついた。「将来、地上の輸送可能手段はすべて電気になる」と彼は未来図を頭の中に描いた。そして、テスラ車で電気自動車事業を推し進め、ロードスターを送り出した。(105ページ)
イーロン氏の視点はあくまで「持続可能な輸送手段」の実現
私は地球温暖化の信憑性に対し疑問を持っている。また自動車の動力源は電動モーターがガソリン・エンジンのすべてを代替するとは考えていない。しかし電気自動車も燃料電池車も、ハイブリッドカーも、ガソリン車と共存すると考えている。テスラ社の特許オープン化の報道を接して思うこと、キーワードは「持続可能な輸送手段とエネルギー」を可能とするイノベーション、である。イーロン氏はオープンなコミュニュケーションと多くのプレーヤーの貢献が必要であると考え、その為には特許が無い方がメリットが大きいと判断した。イーロン氏が100年前のセルデン特許が念頭にあった事は無いと思うが、ガソリン車と電気自動車の勝敗を100年前に決めたのはユーザーの使い勝手。そして100年たっても特許が鍵なのではなく、「持続可能な輸送手段」というコンセプトに少しでも近いものが選択されるという当たり前の事。
マスク氏のコメント「特許より、企業がいかにうまく人材を引きつけて意欲を起こさせているのかのほうが、その成功を判断する効果的な方法ではないか」というコメントに共感する。モチベーションはコンセプト、思いの大きさから来る。