一日に5回整理整頓ができますか?~『調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論』斉須政雄氏(2006)
調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論 (幻冬舎文庫)
斉須氏はフレンチレストランのオーナーシェフ、大志を抱き、二十三歳で単身フランスに渡った著者が、夢に体当たりして掴み取ったものとは?「(2006)
三つ星レストラン「ヴィヴァロワ」
とてつもなく清潔なお店でした。チリひとつありません。もう、いるだけで気持ちがいいのです。
ぼくはここで働くことになるのか。これが、三つ星レストランなのか。・・・武者震いをしました。
調理場の清潔さにも、圧倒されました。ステンレスが輝いている。白いタイルがつやつやと光っている。(89ページ)
オーナー、クロード・ペイロー氏
オーナー本人がやっていることと言えば、一日中掃除をしている・・・ほとんど掃除しかしていない。彼の印象に残る姿と言えば、「掃除をしている姿」です。(91ページ)
大切なのは、簡潔であり、人間性があるということです。「整理整頓がなされていることは、仕事がきちんとなされるための基本なのだ」ということが、この店に来てよくわかった。乱雑な厨房からは、乱雑な料理しか生まれない。大声でわめきたてる厨房からは、端正な料理は生まれない。(92ページ)
ペイロー氏のスタイル
調理場のスタッフは10人ぐらいいるのですが、その全員を常に働かせることはなかったのです。実際にサービスのあいだに働くのは、せいぜい6-7人ぐらい。・・・人を目一杯使わないんですよ。そして数カ月から1年経ったら、自然に人を入れ換えていきます。新鮮なまま、次のお店に行って貰う。そしてまた別の新鮮な血液を絶えず流し込んでいるのです。(108ページ)
「何をやってもいいし、いつも楽しいけれど、ある水準以上の人間性や技術を宿していなければ、ここにはいられないよ」(110ページ)
若い人に冒険させて新鮮なアイデアを取り入れながら、お店の水準をどこまで保つかきちんと見ていたのですから。(132ページ)
(リーダーである)料理長は既にある環境や雰囲気に乗っかることはできない。その環境や雰囲気を1から作り出さなければいけない。(133ページ)
斎須氏の選択
斎須氏は1973年フランスに料理の修業にでる。2店目の修業先が三つ星レストラン「ヴィヴァロワ」。ここで彼は質を追求するクロー度・ペイロー氏のリーダーとして、経営者としての姿に大いに学ぶ。そしてその時のスタイルをベースに1986年、東京三田にレストラン「コート・ドール」を開店させる。「お店の雰囲気を満たしたり、チームメートの力を満たす・・・それがぼくの今の役目です。」(124ページ)
整理整頓という基本
「ヴィヴァロワ」では一日5回全員で掃除をしていたという。フレンチの三つ星レストランの頂点が整理整頓の上に築かれていた。プロフェショナルは「余裕を持って高いレベルを継続する」ことに他ならない。
蛇足
机の上を整理整頓
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