毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

意識はどうして生じるか理解できないから意味がある~『生命の跳躍――進化の10大発明』ニック・レーン氏(2010)

生命の跳躍――進化の10大発明

 ニック・レーン氏はサイエンスライター、生命の革命的「発明」とは?・・・ 生命の誕生/DNA/光合成/複雑な細胞/ 有性生殖/運動/視覚/温血性/意識/死(2010)

 

意識のハードプロブレム

意識のハードプロブレムとは、物質および電気的・化学的反応の集合体である脳から、どのようにして主観的な意識体験(現象意識、クオリア)というものが生まれるのかという問題のこと。意識のむずかしい問題、意識の難問とも訳される。オーストラリアの哲学者デイヴィド・チャーマーズによって、これからの科学が正面から立ち向かわなければならない問題として提起された。(Wiki

感情を持つロボット

ディープ・ブルー並みの知能があり、言語を操り、外界を感知するセンサーを備え、ほぼ無限の記憶力をもちながら、意識をもたないロボットは容易に想像できる。・・・以下のところ、切なさ(意識のより根源的な形態である感情)をどうプログラミングすべきなのかが、われわれにはわからないのである。(352ページ)

感情とは物理的現象なのか?

感情は、身体的つまり物理的なものだが、神羅万象を完全に説明してくれるはずの既知の物理法則に、感情の存在する余地はないのである。・・・われわれは、ニューロンがどうやって単なる物質を主観的な感情へ変えるのかがわかるほど、物質の根本的な性質を知らないのである。(376ページ)

意識には非物質性・精神性が感じられる

なぜ心は、それ自体の物理的なメカニズムを感知しないものだろう?茂みのなかのトラを見つけ、どう対処すべきかを決めることに脳の力を集中させなければならないときに、自分の心をじっくり探るのは、生物にとって明らかに不利である。・・・われわれの知覚と感情は透明なものになる。ただそこにあるだけで、神経という物理的な基礎はまったく感じられなくなるのだ。(381ページ)

感情は自然選択により獲得した神経のコード

感情がリアルに感じられるのは、リアルな意味、自然選択という厳しい試練のなかで獲得されてきた意味、リアルな生や死に由来する意味があるためだ。感情は実のところ神経のコードだが、それは何百年いや何十億世代もかけて獲得した意味が豊かに備わる、生き生きとしたコードなのである。(385ページ)

生命の跳躍

著者は生命飛躍のテーマとして10を選択し、その一つが意識、あるいは情動である。意識あるいは情動は生物の生存へ執着に駆り立てる“心”であり生物学的有用性がある。しかしながら少なくとも人間は脳内の“心”の仕組みを認識することができない。脳には痛覚がないのと同様である。何十億世代もかけ意識の形成を脳自体が認識できない様にした。それが故に意識のハードプロブレムは難問であり続ける。この難問を解決しない限り、ロボットに人間が感情を感じることはあっても、ロボットが感情を感じることはない。

蛇足

情動とは飢え、渇き、恐怖、性欲などに立脚する強よい感覚、のこと

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