毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

経済発展という概念は誰が考えついたか?~『経済史入門―経済学入門シリーズ 』川勝平太氏(2003)

 

経済史入門―経済学入門シリーズ (日経文庫)

川勝氏は比較経済史の研究家、 経済史とは、理論と歴史が統合される場である。経済の大きな流れを捉え、歴史観と精緻な分析手法を合わせ持ったシュンペーターの考え方を応用して、経済がダイナミックに発展する理由を解き明かす。(2003)

経済発展とは

シュンペーターは、経済を均衡状態ではなくダイナミックな動態としてとらえ、「経済発展」と名づけました。・・・シュンペーターは、生産を「結合」という概念でとらえ、経済発展を「新結合の遂行」という概念で表現しました。「生産するということは、われわれの利用しうるいろいろな物や力を結合することである。生産物および生産方法の変更とは、これらの物や力を結合を変更することである。・・・・・われわれの意味する発展の形態と内容は、新結合の遂行という定義によって与えられる。」(『経済発展の理論第』二章)。(108ページ)

新結合の遂行

「新結合の遂行」は、シュンペーターによれば、①新供給源泉、②新生産方式、③新組織、④新商品、⑤新市場、の5項目です。・・・新しい供給源泉から舶来した新物産は「新経済空間を創出」しました。その一つが、資本主義的な生産方法と組織による大西洋経済圏の形成です。・・・西ヨーロッパの資本主義の発展は、新しい経済空間の創出過程です。・・・旧文明圏からもたらされたアジア物産を自力生産していく過程でもありました。この自力生産の過程は、シュンペーターの「新結合の遂行」にもっともよく適合するものです。(111ページ)

新結合が景気循環をもたらす

シュンペーターが関心をもったのは、「新結合」による「激変的変化」です。・・・シュンペンターはコンドラチェフの波動を「新結合」を行った新興の工業と関連させて、木綿と結びついた第一循環を1787~1842年、鉄道と結びついた第二循環を1843~97年と考え、電気工業と結びついた第三循環を1868年に始まるとし、第三循環までを生前に確認しました。(120ページ)

最初の新結合

アジア貿易圏へヨーロッパ人がヨーロッパの物産として大量に提供できたのは、時計と武器を除けば、ラテン・アメリカから略奪した金銀しかなかったのである。(169ページ)

インド木綿が本格的にイギリスに持ち込まれるのは1660年代からで、ファッション革命を引き起こしました。インド木綿の最高級品モスリンの模倣にイギリスが成功したのは(産業革命後の)18世紀末です。茶や砂糖がイギリスに普及するのも同じ頃です。(168ページ)

f:id:kocho-3:20150831083632p:plain

http://special.nikkeibp.co.jp/as/201307/mitsuibussan/vol3/

再び経済発展とは何か?

 

ヨーロッパはアジア物産を渇望した。木綿、茶、砂糖、、、、。支払能力には限界があるからこそ国産化を図り、その過程で産業革命が生じた。産業革命の前に人の欲望があったのである。人の欲望は何も変化のない所からは生まれない。新結合が行われるとき、新たな欲望が生じる。これが経済発展のインセンティブである。

産業革命が起きたから経済発展したのではない。新しい欲望が生まれたから経済発展した。そして新しい欲望を解き放つのはシュンペンターのいう新結合である。

蛇足

経済発展とは新しい欲望を見つけること

 

こちらもどうぞ

 

kocho-3.hatenablog.com

 

 

kocho-3.hatenablog.com