アントレプレナーシップとは何か?~『企業家とは何か』シュンペーター(1998)
革新の担い手「企業家」をシュンペーターはどう捉えたのか。現代に生きる古典の初邦訳。(論文は1928~1949に執筆、本書は1998)
ヨーゼフ・アーロイス・シュンペーター(1883-1950年)
オーストリア・ハンガリー帝国(後のチェコ)モラヴィア生まれの経済学者である。企業者の行う不断のイノベーション(革新)が経済を変動させるという理論を構築した。
創造的反応(破壊)
創造的反応は、少なくとも3つの欠くことのできない特性を持っている。①必ず事後的に理解できるが、事前には絶対といってもいいほど理解されない、②創造的反応は、社会と経済状況を恒久的に変化させる。③資本主義社会における経済的変化のメカニズムは企業家の活動(アントレプレナーシップ)を軸として機能する。(89ページから抜粋して整理)
企業家の活動(アントレプレナーシップ)とは何か?
企業家を定義づける特徴とは、単に新しいことを行なったり、すでに行われてきたことを新たな方法で行うということである。(革新)・・・「新しいこと」は壮大なことや歴史的に重要なことである必要はないことを、最初にまず指摘しておく。それはベッセマー鋼や内燃機関である必要はなく、ディアフット・ソーセージであってもかまわない。(90ページ)
この文章につづき、企業家(アントレプレナーシップ)は①経営管理とは違うこと、②資本家の機能とは違うこと、③発明家とは違う、ことを説明する。
企業家と発明者の違い
発明家はアイディアを生み出し、企業家は「事を行う」。この事というのは、必ずしも科学的に新しい何かを実現することである必要はない。また、アイディアや科学的な原理それ自体は、経済的な実業活動のために重要ではない。古代ギリシャの科学では蒸気機関を組み立てるために必要なすべてのアイディアが生み出されていたであろうが、それでも古代ギリシャ人やローマ人は蒸気機関を作り出すことはできなかった。実際、ライプニッツはスエズに運河を作るというアイディアを出していたが、このアイディア自体は200年間にわたって経済史に何ら影響も及ぼさなかった。(92ページ)
経済成長の担い手
シュンペーターによれば「新しいこと」ことのみが成長の源泉である。そしてそれを担うのは企業家(アントレプレナーシップ)である。新しいこととは、発明である必要はなくむしろ「他の人が想像しない、あるいは社会的慣習に反していてやろうとすら思わない」ことだと指摘している。
ギリシャ人とローマ人は蒸気の利用方法に気づきながらそれを実用化しなかった。一般的には奴隷が存在したために蒸気の力に依存する必要を感じなかったからだと言われている。ライプニッツがルイ14世にスエズ運河を提案したのは1671年、開通の200年前であった。200年前には実現する技術が無かった。
世の中には新しい発明・アイディアがありながら活用されていないものが今も沢山あるのである。逆に言えば新しいと思ったことも大概は先駆者が存在するのである。
イノベーション、アントレプレナーシップというと何か難しいことの様に捉える。シュンペーターは単純に「ことをなす者」の重要性に焦点を当てている。我々は新しいことを始めるのに発明すら必要なく、「人がやらない、やっていないこと」をやればいいのである。それが創造的破壊を生み出す。シュンペーターは経済理論を使って、我々を励ましてくれていた。
蛇足
企業家は資本を持っている必要もない(投資を受ければいい)
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