毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

あなたはどこまで一貫性を持てるか?、iPhoneのパッケージに学ぶ~『技術大国幻想の終わり』畑村 洋太郎(2015)

技術大国幻想の終わり これが日本の生きる道 (講談社現代新書)

畑村氏は失敗学、創造的設計論、「技術では負けていない!」という思い込みを捨てよ。(2015)

 

 

iPhoneを分解してみて

 

 

実際に分解してみてわかったのは、一般的な電子部品と違って電気的な接合やハンダ付けなどがないので、メカニカルに各部品を全部分離することができることです。部品の取り付けには、小さなネジやカシメ、両面テープなどが使われていました。・・・それから使われている部品の中には、これまでにないつくり方をしているものがあることがわかって驚きました。たとえば本体枠や小さなネジなどです。本体枠のようなものは一般的には金型を使って射出生計やダイカストでつくりますが、iPhoneは削り出し、つまり材料を工作機械で削ってつくっていたのです。メリットは形状の制約が少なくなり、より自由なデザインができるようになっていることです。デメリットは当然コストが上がることです。(143ページ)

 

iPhoneのパッケージ

 

 

たとえばiPhoneが入っている紙箱のコストに600円かかっているという試算があります。(日経新聞電子版、2013年4月30日)。ただの箱に、これだけのコストをかけられるのも、アップル製品のデザインに対するこだわりを示すものであり、そのこだわりに消費者が価値を認めてお金を払っているからこそ成り立つのです。(95ページ)

 

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パッケージの内側(!!)に折り込み跡を見せない、ただそれだけの追求(組み立てに専用装置が必要でありコストアップにつながる)

価値とは何か?

 

 

(価値とは)人間という種の根源的な欲求のようなものがくると思います。そこから五感、欲望、さらにそれぞれの地域の分化、習慣、土地おとの人々の考え方、伝統といったものがあり、満足感、心地好さ、目、快楽、安心感といったものが要素としてあげられるのではないかと考えています。(91ページ)

 

iPhoneのパッケージが600円、組立にはハンダ付け、接着剤を使っていない、一見関係ないこの二つをどう結びつけるか?私見ではあるが組立者の技量を問わない組立工程にすることでコストダウンと大量生産を可能にした。一方でユーザーにとっては製品以上にデザインイメージを与えるパッケージにこだわる。すべては製品のデザイン性の追求の為に、製造工程から販売工程まで一貫して一つのコンセプトが貫かれていることになる。

アップルは元々パソコンメーカーであった。iPodが発売されたのが2000年、iPhoneが2007年、始まりの時はいつもパソコンメーカーにできるわけない、と言われた。ここまで価値の追求に一貫性を持ったメーカーがあるであろうか?

技術大国幻の終り

 

 

「技術では負けていない!」という思い込みを捨てよ。「品質」「機能」はもはや競争力にはならない。これからは人々の欲しがる「価値」を突き詰めろ!~本書帯より

 

技術、品質、機能、だけでは価値をつくれない。デザインだけが重要なのではない。600円 かけてパッケージに凝れば済むのではない。自らの信じる価値を一貫して追求することが必要なのである。

蛇足

 

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