毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

怒ること、行動すること、93歳のレジスタンス戦士のメッセージ~『怒れ!憤れ!』 ステファン・エセル(2011)

怒れ! 憤れ!

若者よ、無関心はいけない。怒りを持って行動せよ。欧米の怒れる人々に火をつけたといわれている活動家の回想記。(2011 )

 

 ステファン・エセル (仏1917 – 2013年)

 

 外交官、大使、作家、強制収容所生還者、フランス・レジスタンスメンバー。

 後年における彼の積極行動主義は、経済的不平等、イスラエルパレスチナ紛争、第2次世界大戦後のソーシャルビジョン保護等に向けられている。著書『怒れ!憤れ!』は全世界で450万冊以上を売り上げた。

エセル及び彼の著書は、スペイン・インディグナドス (15-M運動)、米国のウォール街を占拠せよ、その他政治運動等に対して連鎖的に刺激させた。(Wikif:id:kocho-3:20150709073838p:plainステファン・エセル - Wikipedia

怒れ!

 

私はすべての人に訴えたい。一人ひとりが怒るべき理由を見つけて欲しい。怒りは貴重だ。かつてナチズムに怒りを覚えた私のように、怒りの対象を持つ人は力強く前進する戦士となり、歴史の流れに加わる。歴史の脈々たる流れは、一人ひとりの力で続いていくものである。この流れが向かう先は、より多くの正義、より多くの自由だ。ただし、鶏小屋に忍び込んだ狐のような無節操な自由ではない。世界人権宣言が1948年に謳ったように、正義と自由を求める権利は誰にでもある。この権利を享受していない人々を見つけたら、その人たちのために立ち上がり、権利を勝ち取るのに力を貸さなければならない。(28ページ)

 

今日の世界

 

たしかに今日の世界では、怒る理由が昔ほどはっきりしなくなっている。言い換えれば、世界はあまりに複雑になった。命じたのは誰なのか、決定を下したのは誰なのか、支配系統をたどるのは必ずしも容易ではない。もはや相手は、明らかに悪行を働いている一握りの権力者ではないのだ。いまの相手は広い世界であり、誰もが知っているとおり、相互に依存する世界である。密接に結びつき関連し合う世界に私たちは生きているが、これは人類史上初めてのことだろう。だがこの世界にあっても、許し難いことは存在する。それを見つけるためには、目をよく見開き、探さなければならない。若者よ、探しなさい。そうすれば、きっと見つかる。いちばんよくないのは、無関心だ。「どうせ自分には何もできない。自分の手には終えない」という態度だ。そのような姿勢でいたら、人間を人間たらしめている大切なものを失う。その一つが怒りであり。怒りの対象に自ら挑む意志である。(46ページ)

 

93歳のレジスタンス

 エセルはナチス・ドイツへのレジスタンスに参加、ゲシュタポに逮捕され強制収容所に送られるが、脱走に成功した経歴を持つ。人生を振り返って「レジスタンス運動を支えてきたのは怒りだった。」と説く。執筆された2010年はリーマンショックの直後であり、彼は今日の問題として金融市場の肥大化をあげる。

世の中は見えにくくなっただけで、どこかで誰かが今も平和と民主主義が脅かされている。それは自ら目を凝らさないと見つけられない。

怒ることは良くない、と思っていないか?

本質的な怒りを忘れること、それが老いるということではないか?

93歳のレジスタンスは「怒れ、そして怒りの対象に自ら挑め!」と、我々をけしかける。

蛇足

 

どれだけ怒りの対象を見つけられるか?

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