毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

明治憲法は近代戦に適合していなかった、ここからコーポレートガバナンスを考える~長谷川慶太郎氏「大局を読むための世界のkん現代史」より

大局を読むための世界の近現代史 (SB新書)

長谷川氏は元祖アナリスト、20世紀は、苛烈な戦争の世紀でもあった。二度にわたる未曽有の世界大戦、そして国家総力戦としての「冷戦」。こうした過去の戦争がなにを発端とし、どのような経緯でいかにして終わったのか2014年刊

明治憲法と近代戦

 

日本は大日本帝国憲法明治憲法)の体制にのっとり、近代戦を戦おうとしました。ところが、明治憲法は近代戦に適応しない政治体制でした。

 

その最大の理由は、明治憲法の第12条で規定されている陸海軍の統率大権にあります。「天皇ハ陸海軍ノ編成及常備兵額ヲ定ム」と、天皇が陸海軍の統率者であることが定められていますが、天皇一人がそれを実行するのは実質的に不可能であり、また実際には、首相と陸海軍大臣がその責務を担っていました。そして、第一次世界大戦によって、明治憲法がいかに世界の体制から遅れた存在であるかが明白になったのです。(64ページ)

 

第一次世界大戦の敗戦国

 

長谷川氏は第一次世界大戦が国民経済を巻き込んだ総力戦であり、それは文民統制によって率いられた軍隊でなければ戦争を継続できないと指摘する。確かに敗戦国となったドイツ帝国オーストリア=ハンガリー帝国ロシア帝国、これらは皆皇帝に引き入れられた軍隊であった。

文民統制とは何か?

 

文民統制(シビリアン・コントロール)は、文民の政治家が軍隊を統制するという政軍関係における基本方針である。政治が軍事に優先することを意味する。(wiki

組織論として文民統制を考える

 

近代戦が国民経済の総動員を必要とする総力戦だとすれば、国家経済全体の観点から戦争遂行の体制の構築が必要である。統帥権天皇と軍だけで完結してしまえばどうしても国家経済全体からの視点が薄くなる。これをビジネス用語で捉えれば「コーポレートガバナンス」が上手く機能していなかったという事になる。

コーポレートガバナンスは企業の不正行為の防止もあるが、それ以上に競争力・収益力の向上を総合的にとらえ、長期的な企業価値の増大に向けた企業経営の仕組み、である。企業価値の増大には長期的な大戦略が必要であり、部分的な戦略だけでは十分でないと言い換えられる。

コーポレートガバナンスは様々なコストがかかる。しかし長期的な企業価値の増大を考える時、コストよりメリットの大きい。統帥権に関する分析はこの事を教えてくれる。

蛇足

 

明治憲法改正の機運はなかった。

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