毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

世界初の成文憲法はなぜ1788年アメリカで生まれたか?~自律的組織論として捉える

憲法で読むアメリカ史(全) (学芸文庫)

 阿川氏は米国法の研究家。建国から二百数十年、自由と民主主義の理念を体現し、唯一の超大国として世界に関与しつづけるアメリカ合衆国。その歴史をひもとくと、各時代の危機を常に「憲法問題」として乗り越えてきた、この国の特異性が見て取れる。2013年11月刊

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 1780年頃、米国の人口は200万人と黒人奴隷50万人

アメリカ独立革命成功の結果 

各州が完全な独立を達成し、主権国家として何者にも左右されない民主的な共和政体を樹立したたために、かえってお互いに身動きが取れなくなった。国王を取り除いた人々は、国王に代わる何らかの統合の仕組みが必要なことに、遅ればせながら気づく。(22ページ) 

統治の仕組み~大きな共和政体

 

自分たちが選んだ代表を通じて間接的に政治を行う共和政体(代表民主制)のほうが望ましい・・・そして大きな共和国の方が小さな共和国よりも、多数の横暴を防ぎやすい。この点こそ広大な領地を持ち人口の多い連邦が、狭い領域と少ない人口しかない州に対してもつ優位性に他ならない。(48ページ) 

統治の仕組みが必要だが、、、

 独立革命によって確立した民主的な共和政体が、連邦政府の樹立によって失われるのではないかという恐れである。

連邦政府の構造~権力の分散・均衡・抑制

 

国民の主権を分割して連邦政府と州政府に委ね、さらにそれぞれの政府機能を立法、行政、司法の三権に分立させる。特に「・・・人民によって委譲された権力は、まず二つの異なった政府(中央政府と地方政府に分割された権力が、更に明確に区別された政府各部門に分割される。したがって人民の権利に対しては、二重の保障が設けられている。」大きな共和国の論議と同様そこに見られるのは、多元的な価値の競争のなかから活力を生み出し、人々の自由をそこなうことなく抑制と均衡を通じて調和をもたらそうとする、ダイナミックな考え方である。憲法制定に際して表明された200年以上前のこの思想は、現在でもアメリカという国家の基本理念として生き続けている(50ページ)

 

1788年アメリカ合衆国憲法は世界初の成分憲法

アメリカ合衆国憲法は世界で最初の成分憲法である。アメリカ合衆国憲法修正第5条「何人も法のデュープロセスによらずして、生命・自由、または財産を奪われることなし」、修正第14条「いかなる州の、法のデュープロセスによらなければ人の生命、自由、または財産を奪ってはならない」によって連邦政府と州の行動規範を要求している。憲法は国民ではなく、国家を規制するものとして誕生した。アメリカが憲法を制定しようとした時、アメリカには国王は存在しなかった。だから憲法が成分化できたのである。

すべての組織に当てはまる原理

 今から225年前憲法制定時の米国は弱小農業国に過ぎなかった。イギリス国王が居なくなった時、そこには権威も権力も存在しなかった。連邦政府の必要は認めながら暴走を防ぐ、その為に政府のミッション、あるいは行動規範が明確化した。連邦政府、州政府、司法、議会、すべてが一つのミッションに基づいて行動する事=立憲主義を採用した。そしてそれぞれの政府部門は自発的に行動する事で権力の分散とダイナミズムが引き出される。これを平たく言えば組織の成功要因は「目的と権限の明確化」となる。会社であろうと趣味の団体であろうと、すべての組織はその目的と行動原理が明確化され、各機能パートに委任され自立的に処理される事が望まれる。 

蛇足

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