毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

人類はチーズをいつ頃から食べてきたか?~『チーズと文明』

チーズと文明  

 キンスステッド氏はチーズと乳産品化学の研究家。私たちが普段、何気なく食べているチーズには、新石器時代から始まる壮大な歴史があった!2014 年刊

 チーズはいつ頃誕生したか?

 

牛の牧畜が始まったのは最も古いところで、中央アナトリア(現トルコ)の紀元前7000年ごろのことだ。・・・家畜化した動物の骨の分布の変化を見ていると、肉からミルクの生産に実質的に移行したことを表す最初の痕跡は、紀元前6500年頃西部アナトリアに残っている。・・・アナトリアでミルクの生産が始まった紀元前7000~6500年ごろh、成人のラクースアレルギーはほぼ人類共通で、その為大人は未だミルクをあまり飲まなかったのである。ところが南西アジアで酪農が始められた直後からチーズとバターの製法が発明され、それによって、人類はミルクから栄養を取ることが可能になったのである。(25ページ

 

 チーズの神話

 

 遊牧の旅人がヤギか羊などの動物の胃から作った水筒に新鮮なミルクを入れて旅に出たところ、立ち止まってミルクを飲もうと思ったら、ミルクは固まっていたという。この筋書きは信憑性が低い、そのミルクを飲む遊牧民の成人に、ラクトースに対する耐性があろことが前提となっているからだ。新石器時代人がミルクを集めてチーズやバターを製造するようになった後も、少なくとも千年は成人のラクターゼ持続性は出来上がらなかったらしい。(29ページ)

 

ラクターゼ持続性

 

人間の乳幼児は母乳消化の為ラクターゼという酵素を作っており、これが乳糖の消化を可能とする。この酵素は成人前に発現しなくなるという。最新の遺伝子の研究によるとラクターゼが成人後にも持続する能力を獲得したのは紀元前5500年頃だという。つまりそれ以前、大人はミルクを食用にはしていなかったという事になる。チーズが先で飲用ミルクが後だった。

チーズは歴史によって多様化してきた

 

チーズはミルクを発酵する至ってシンプルなもの。人類はかれこれ9000年に渡ってチーズを食べてきた。メソポタミアで生まれ、ギリシャ、ローマ、中世ヨーロッパ、時代を経るごとに様々な技術を取り込んでチーズは多様化してきた。保存ができ、付加価値が高い、多様性のある味覚、貿易品目としては理想的な商品でもある。家庭の秘伝のチーズがある一方で産業化された時期も15世紀、あるいは中世の修道院まで遡る事が可能であるという。

日本のチーズ

 

日本に始めて伝来したのは仏教と一緒に6世紀にもたらされた。チーズが一般化するのは明治以降である。日本人のチーズの消費量は年間一人2㎏以下、欧米の消費量のだいたい1/10と見当がつけられる。

蛇足

 

奈良時代、チーズは“醍醐”と呼ばれた。

こちらもどうぞ

 

人類は3500年以上前のメソポタミアから発酵パンを食していた~なぜキリスト教の祭事ではあえて無発酵パンを使うか? - 毎日1冊、こちょ!の書評ブログ