毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

我々の右脳は"神の声"をいつまで聴いていたか?~『神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ(2005)

神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡

ジュリアン・ジェインズは心理学の研究家、3000年前まで人類は「意識」を持っていなかった! 右脳に囁きかける神々の声はどこに消えたのか? 豊富な文献と古代遺跡の分析から、意識の誕生をめぐる壮大な仮説を提唱する。(原著は1976、翻訳は2005)

 

意識とは何か?

意識の働きはどれも、(自分を取り囲む世界を歩きまわる)こうした行動の比喩や類推に基づいており、非常に安定した基盤を入念に構築している。そこで私たちは、実際の行動についての類推によるシミュレーションを“物語化”する。・・・意識はたえず物事を物語の中にはめ込み、あらゆる出来事に前後の関係を付加している。(544ページ)

人類4000年の歴史

人類がこの地球上で過去4000年にわたって演じていたこのドラマ、この長大なシナリオは、世界の歴史の中核を成す知的傾向を大局的に見ると明らかになる。前2000年紀に、人間は神々の声を聞くのをやめた。前1000年紀には、まだ神の声が聞こえた人たち、つまり託宣者や預言者もまた、徐々に消えていった。紀元後の1000年紀には、かつて預言者たちが言ったり聞いたりした言葉の記された聖典を通して、人々は自分たちには聞こえぬ神の言いつけを守った。そして2000年紀には、そうした聖典は権威を失った。科学革命によって、人々は昔からの言い伝えに背を向け、失った神の権威を自然の中に見いだした。この4000年の間に私たちは、ゆっくり、容赦なく、人類を世俗化してきたのだ。(528ページ)

二分心

遠い昔(紀元前2000年紀以前)、人間の心は、命令を下す「神」と呼ばれる部分と、それに従う「人間」と呼ばれる部分に二分されていた、というものだ。どちらの部分も意識されていなかった。(109ページ)

文明とは、全住民が知り合いどうしでないほどの広さの町々における生活術を指す。・・・“二分心”が生み出した社会組織こそが文明の発祥を可能にしたという仮説を立てた。(180ページ)

紀元前2000年紀には何があったのか?

(声に依存する)神々の弱点は、文字の興隆によって前2000年紀に補われるとともに、おおいに問題化した。文字によって、ハムラビ王の政治体制のような社会体制の安定が可能になった。しかしその一方で、文字のせいで“二分心”の声の権威は徐々に衰退していった。(249ページ)

脳の右半球には何があったのか?

言語野はすべて左半球にある。なぜだろう。言語機能がどうして片方の大脳半球だけで司られるのかは、私に限らず、この機能の進化について考えたことのある人なら誰もが魅了される興味深い謎だ。(130ページ)

意識の誕生と文明

 

“世界”と“見る“という言葉を使わずして、”世界を見る”ことは可能であろうか?我々は自分以外の部分を“世界”という言葉を使って表現し、“見る”という言葉を使って世界を視覚的に認識しとによる心が動くことを“見る”と読んだ。

我々は世界を言葉によって比喩的に“意識”する。前2000年紀までは人間は意識を持たず、二分心によって行動していたという。神の声と人間の声、神の声を脳の右半球で処理していた。神の声を現代風に表現すると幻聴となる。そして人間の声は社会生活を営む判断を無意識のうちに行わせる。

人類は言葉と文字を持つことで意識の働きが強化されると同時に“神の声“に依存する必要がなくなった。脳の右半球の果たしてきた役割は、文字として脳の外に保存されるようになったとも言える。

蛇足

 

意識とは言葉によって概念を釘ずけにすること

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