毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

今や人類の半分は都市に住んでいる。都市は出会いの場であり、変化の場である。~『都市は人類最高の発明である』(2012)

都市は人類最高の発明である

 グレイザー氏は都市経済学の研究家。「無秩序に広がる都市こそが、人類にとって最も必要なものなのだ!都市を高層化・高密化させて発展させることが人類の進歩」と主張する。 2012年刊

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都市は人類最高の贈り物

都市が人類の強みを拡大するということだ。人類という社会的生物種の最大の能力は、お互いから学ぶ能力だ。(329ページ)

都市はエコだ。高密居住して歩く方が、低密の郊外に住んでどこへでも車ででかけるよりはずっと環境にやさしい。(353ページ)

20世紀における郊外生活との戯れは、工業都市の短い絶頂と同じく、トレンドというよりは一時的な脱線に思えるようになるだろう。(355ページ)

工業都市デトロイトの繁栄と凋落

 

 

20世紀末のデトロイト市は、単一産業が何十万もの低技能労働者を、3つの垂直統合された大企業で雇っているのがほとんどだ。なんと有害な組み合わせだろう。・・・巨大な垂直統合企業は短期的には生産的かもしれないが、長期的な都市の成功に不可欠な、エネルギッシュな競争や新しいアイデアは作り出せない。

 

都市の貧困者は都市が成功している証拠

 

 

都市が貧困者だらけなのは、別に都市が人々を貧困にするからではなく、都市が生活向上の見通しによって貧困者を引きつけるからなのだ。・・・都市は、労働者と資本家の取引を可能にするだけではない。それは広範な種類の仕事を、しばしば何千も提供する。大都市は雇用主の多様化したポートフォリオなのだ。(95ページ)

 

自動車と郊外

 

 

スピードと空間は自動車による生き方の二つの大きなメリットだ。アメリカでの公共交通による平均通勤時間は48だ、自動車による平均通勤時間は24分だ。自動車は、かなりゆったりした密度の大量生産住宅を可能にして、おかげで標準的なアメリカ人は、世界標準でいえばとんでもなく豪勢なライフスタイルを送れる。・・・ニューヨーカーのうち車通勤は1/3以下だが、アメリカ全体だと86%が自動車通勤である。(18ページ)

 

フラットな世界に高層都市

 

著者の主張は世界とつながった都市が高層化・コンパクト化する事が良いというもの。人々は自分のライフスタイルにあった都市を選ぶ事になる。NYや香港はビル高層化を選択し、東京は電車を選択した。どちらも高密度かつコンパクトなエリアに都市機能が集積し、そこにビジネス・教育・文化がボトムアップに提供されていく。

著者は米国の9割弱のライフスタイル郊外+自動車通勤が継続的かという点について懐疑的である。私は自動運転が本格化した場合に自動車が更に空間と時間の効率を再度高める可能性があると思うので未だ判らないと判断している。アメリカ人はエゴだけで自動車社会を選択したのではなく、時間節約のメリットがあるから選択した結果なのだから、、、。

蛇足

 都市とは出会いの場であり変化の場

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