毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

粘菌が知性を持っている?~世界に通じる「八百万の神」の非常識な発想法

ブレイクスルーの科学者たち (PHP新書)

 本書では、現代日本のトップレベルの科学者11人を取材し、「ブレイクスルーの法則」を解き明かす。

 

その中から中垣俊之氏(北海道大学教授)の粘菌に関する研究に絞って話を進める。

 粘菌には細胞性粘菌と真性粘菌

細胞性粘菌と真性の大きな差はたくさん集まったときに、細胞という単位が残っているか、なくなってしまうかだ。細胞性粘菌は細胞単位で集まるわけだが、真性粘菌は細胞同士が真の意味で「融合」してしまう。まさに真性の粘菌なのであり、巨大化しても「単細胞」のままという驚異的な生き物なのだ。

ネイチャーに論文「粘菌が立派な知性を持つ」を発表

モジホコリという黄色い粘菌を細かく切り分けて、縦横3センチの迷路のあちこちに億く。すると、粘菌は迷路全体に広がる。そこで迷路の入り口と出口の二カ所に粘菌の好物であるオートミールを置いてやる。粘菌は「全体としてつながっていたい」という欲求と「エサが食べたい」という欲求の板挟みになった結果、最短距離で入り口と出口を結ぶ経路を形成するのである。つまり、粘菌は、迷路を解く能力を秘めていたのだ。(67ページ)

驚くべきことに、粘菌は網目状に大きく広がる場合に「保険」をかけているというのだ。例えば動物に噛まれて粘菌の網目状の身体の一部が切れたとして、それにより身体が二分されてしまっては困る。そこで、網目を広げるときに、何カ所かを切断されても、全体としてつながっているようなネットワークを形成するのだ。(71ページ)

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栄えある?「イグ・ノーベル賞」受賞 「迷路を解く粘菌」って?! 中垣俊之・北大准教授ら研究−北海道新聞[現代かわら版]

粘菌の行動を数学によるモデル化、ネットワーク分析に応用

鉄道の場合も、事故なのである路線のある区間が不通になった場合、鉄道全体のネットワークが分断されてしかったら、迂回しても目的地には到達できない。だが、何カ所かが不通になっても、全体がつながっていさえすれば、迂回すれば支障は生じない。つまり粘菌が生きるためにかけている保険―全体としてつながっていること-は、人間社会の鉄道や道路や通信におけるネットワークの安全性の問題に応用可能なのだ。(71ページ)

 イグ・ノーベル認知科学賞(2008年)、イグ・ノーベル交通計画賞(2010年)

中垣がイグ・ノーベル賞を受賞した経緯は面白い。欧米のキリスト教文化圏には、彼らが気付かない独自の「思考パターン」が存在する。それは、「知性=インテリジェンスは、人間だけが持っている」という根強い信仰だ。(中略)イグ・ノーベル賞の審査員は、ある意味、上から目線で「この研究、笑えるな」と賞を出しているようなのだが、中垣の受賞は、逆に審査員の知性の限界をかいま見させることになった。科学という、客観性の権化の様な学問も(無意識のレベルで)文化や宗教の影響がぬぐいされないわけだ。(78ページ)

 

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 イグ・ノーベル賞の授賞式 - Dailymotion動画

中垣氏がどうしてイグ・ノーベル賞を受賞できたか?英語で論文を書き、数学によるモデル化をし、そして日本人らしいユニークな論文だったからだと考える。欧米の流儀で論文を書くが、コンテンツはあくまで日本、成功の法則が見える。

蛇足

八百万の神、僕らの大切な発想法。