毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

有限と無限、どちらが大きいか?~鉛筆1本で証明してみる。

「走ることの最も遅いものですら最も速いものによって決して追い着かれないであろう。なぜなら、追うものは、追い着く以前に、逃げるものが走りはじめた点に着かなければならず、したがって、より遅いものは常にいくらかずつ先んじていなければならないからである、という議論である。」アリストテレス『自然学』

 

中学生からの哲学「超」入門―自分の意志を持つということ (ちくまプリマー新書)

ゼノンのパラドックス

快速で有名なギリシャ神話の英雄アキレスが亀と競争します。だたしアキレスは、亀の少し後ろからよーいドンですタートする。ゼノンによると、アキレスはあっという間にさっき亀がいた所(A)に到達するけれど、その時にには亀は少しは前に進んでいる。(B)。つぎにアキレスがまたさっき亀がいた所に到達すると、また亀はその時間分少し前にいる。こんな具合で、アキレスが「さっき亀がいたところ」につくと、亀は必ずアキレスの少し前にいる、というプロセスが無限に繰り替えされる。

有限の時間のうちに無限の点を通過する

これを要約すると、アキレスが亀を追い越すには、アキレスは「有限の時間のうちに無限の点を通過しなければならない」ということになるが、有限の時間の内に無限の点を通過することは不可能なので、アキレスは亀を追い越せない、というのです。f:id:kocho-3:20140531230027p:plain(98ページ) 

丸い円を描いてみる

今鉛筆で紙の上に丸を一つ書いてみます。この○の中は有限だけれども、この中には無限の点が入ります。有限なものが無限のものを含むことはできる。ここでは有限>無限です。

我々の中に「有限より無限が大きい」という抜きがたいイメージが存在している為に、多くの人がゼノンの説を「なるほど」と思ってしまう。しかし「無限」、「有限」という概念の核心は果てがないとか、限界があるということであって、必ずしも「ないよりも大きい(最大量)」ということではない、ということが理解できれば、パラドクスは解けます。(99ページ)

 

我々は有限と無限という言葉と、そこから派生するイメージに囚われている事がわかる。繰り返すと有限と無限は限界が存在するか、存在しないかを表現しているのであって量が多い、少ないを表現しているのではない。しかし通常なら無限の量の方が有限の量より多いと捉える。円の説明で言えば、点は面積は持たないが、通常は面積を持つ円が無限にある事を連想させる。従って面積のある円が無限に集まれば有限より大きくなる。

蛇足

我々は摩擦のない世界を想像できない。