毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

タイヤはなぜ黒いか?~現在のタイヤはシリカブレンド、今のタイヤは何色にでもできる。

タイヤのおはなし (おはなし科学・技術シリーズ)渡邉氏はタイヤメーカーの研究者の経歴、本書は2002年の出版。

タイヤはなぜ黒い?

タイヤが黒いのはゴムを補強する(強いゴムにする)ために、カーボンブラックを混ぜてあるからです。カーボンブラック平たく言えば炭の粉ですから、真っ黒で、これをゴム重量の数十パーセントも混ぜていますから、出来上がったゴムも真っ黒になります。自動車用タイヤほど強いゴムでなくてもよい自転車タイヤや運動靴のゴム底などには、カーボンブラックを混ぜていないゴムも使われています。

カーボンブラックからシリカへ

シリカ(珪素)は元素の周期表で見るとわかるとおり、炭素と同属で性質が似ていますので、ゴムの補強効果も捨てたものではありませんし、磨耗係数が高くしかも転がり抵抗が小さいゴムが得られるというメリットがある為、薬品会社やタイヤ会社がそれぞれ研究開発を続けてきました。1968年ころ、ヨーロッパのあるタイヤメーカーがブルーの大変綺麗な冬用タイヤを発売したことがありました。

シリカは炭素にくらべヒステリシルロスの特性が違う

不規則に絡み合っているゴム分子鎖が、力の方向に引き伸ばされるっときに分子鎖同士が摩擦しあって、それに要するエネルギーと時間が消費されるのです。このとき消費されるエネルギーが“内部摩擦”または“履歴損失(ヒステリシルロス)と呼ばれるもので、結果的に熱エネルギーに変換されます。ここにもゴムの大きな特徴があります。すなわち力学エネルギーを熱エネルギーに変換することにより、音や振動の伝達をやわらかくする作用をします。(68ページ)

Kochoの理解

シリカを入れると炭素を入れた場合に比べ低温ではヒステリシルロスが発生しにくく、高温になると急激にヒステリシルロスが発生する特性が得られる。これはシリカの方が炭素にくらべ本来ゴムとの結合力を劣っているものを添加剤で補っているから。ある一定のb熱領域に入ると一気にゴム分子鎖が運動をはじめる。

現在のタイヤの説明

ゴムの特性はTg(ガラス転移温度)によって変わる。Tgが高いゴムは、発熱によるロスが大きく、グリップが良いものの転がり抵抗で劣る。一方、Tgの低いゴムは転がり抵抗は少ないが、タイヤがスリップを始めるような高い周波数の振動が加わる領域ではグリップに劣る。

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理想的なのは、通常走行で転がり抵抗が低く、制動時にはグリップが高まるタイヤである。そこで、図4の特性が急激に立ち上がるように、材料の配合、補強材とゴムの結合方法を変える。詳細なノウハウは各社とも明かさないものの、基本的な考え方は、グリップに優れるTgの高いゴムを使いながら、通常走行では発熱が起きにくいように、内部のゴム、補強材の動きを抑制することだ。

http://www.nikkei.com/news/print-article/?ng=DGXNASFK0602N_W2A200C1000000

今やタイヤにはシリカが大量に入っている

現在のタイヤにとってシリカを入れる事は様々な面でメリットが高い。その重量比はゴム100に対し、シリカ40、カーボンブラック10、添加剤3の割合、(218ページ)カーボンブラック0も技術的には可能。もはやタイヤは黒くなくてもいいという事。黒以外の色のタイヤが発売されないのは、複数カラーによる在庫の増加などが挙げられるが、最大の要因は消費者がタイヤは黒と思い込んでいてそれを簡単には覆せない事と言われている。タイヤメーカーにとっても消費者にとっても習慣に従っている事が一番楽という事。

蛇足

人は既成概念に基づいて行動している事を知る