毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

若田氏の無重力の影響とは具体的には何?~どうして抱き抱えられて宇宙船から出てくるか?

 若田さんは国際宇宙ステーション(ISS)でコマンダー(船長)188日間の長期ミッションを終え、514日、ロシアのソユーズ宇宙船で帰還した。

 

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Expedition 39 back on solid ground - YouTube

 

 どうして若田氏は抱き抱えられて宇宙船から出てくるのか?無重力の影響というが具体的には「起立性調整障害」、若田氏は体液不足の脱水症状状態だった。激しい運度をすれば意識を失いかねない状況、だから抱き抱えられて移動していたのだ。

 

人間はどこまで耐えられるのか (河出文庫)

アッシュクロフト氏はインシュリン分泌の研究者。「 極限の環境における人間の生理学的な反応を説明しながら、人間が生き延びる限界を探る。」
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

 

起立性調整障害

 地球へ帰還するときに、多くの宇宙飛行士はたっていられずに、意識を失いそうになる。これは起立性調整障害、起立性低血圧と呼ばれる症状で、宇宙飛行士の微重力状態により心臓血管系に大きな変化が生じたことによる。重力から開放されると体液は上半身へ移動し、それを補うために体液の量が減って、再び全身へ循環させようとする。(296ページ)

 

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1  通常の重力下

2  無重力になって数秒後

3  調整がきいて体液が全身に循環

4  地球に帰還後~体液は減少している。(実は血液も)

帰還前には液体を摂取

現在ではロシアでもアメリカも宇宙飛行士は帰還の直前に1リットルの水かジュースを飲み、塩分の錠剤を8個服用する。これは短期間の飛行で生じる起立性調整障害には非常に効果が高いが、残念ながら、宇宙に長期間滞在した飛行士の体を守ることはできないようだ。

 

無重力が体液に与える影響

無重力状態は、体液の循環に大きな影響をおよぼす。地上では重力が働いているので、体液や組織の水分は下半身にたまるが、地球の重力場を抜けると、体液は上へ移動しはじめ、とてもわかりやくすて不快な影響をもたらす。まず顔がむくみ、首と顔の血管がくっきり浮きでる。眼球が外に飛び出るように感じ、鼻は詰まって嗅覚と味覚がなくなる。(中略)体液が移動すると、東部と胸部で圧力を感じる受容体が刺激され、二日三日で無重力状態に適応する。尿の量を増やし、体液で液体を吸収する量を減らして、血液と体液の量を減らすのだ。宇宙飛行中は最初の数日で体重が減るのも、主に体内の水分を放出するからである。(323ページ)

 

宇宙飛行は経験の積み重ねによって洗練されてきている。時には尊い命を犠牲にしながら、時には偶然から。若田氏はコマンダー(船長)として188日のミッションを終えた。若田氏もまた我々人類に経験をもたらしてくれたはずである。

 

蛇足

 たいがいの事は誰かが経験している。