毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

統計上「石油の時代」はすでに終わっていた~我々の知らない真実、新刊「木材・石炭・シェールガス」より

 

木材、石炭、シェールガス 文明史が語るエネルギーの未来 (PHP新書)

本書は2014年5月の新刊。

本書はエネルギーと環境に関する遺言~「あとがき」より

40年近くに渡ってエネルギー関連の業務につき、その後半のおよそ25年を世界のエネルギー情勢の調査・分析に費やしてきたが、この3月末をもって調査・研究者としては現役を退いた。したがって本書は、言わば筆者の職業上の遺言として、若い世代に対してエネルギーと環境に関しての一般社会の思い込み、言わば「認知バイアス」を、歴史と原理に基づいて説明しようとしたものである。(250ページ)

 

 再生可能エネルギーはバラ色の新しい夢ではない~中世への回帰である

 

エネルギーの歴史、人類史を振り返れば、再生可能エネルギーへのシフトは、新しい時代に入る「革命」や「技術革新」などではなく、中世以前への回帰、一種の復古運動である。少なくとも進歩史観に沿ったバラ色の将来は見えてこない。

 

 

 

再生可能エネルギーへのシフトが起きない理由としてその理由を箇条書きすれば以下の様になる。

 

  1. 生可能エネルギーはコスト・環境付加の両面から競争力がない、

  2. シェールガスの資源化が本格化、天然ガスの優位性が高まっている

  3. 石油は高価格がエネルギーとしての比較優位性が低下している

 

筆者は今後は再生可能エネルギーはエネルギー源の5%程度、後は化石燃料の3つ、石油・石炭・天然ガスのミックスが望まれると解説している。

 

 
我々の認知バイアス、「石油は圧倒的なエネルギー源である」

 

f:id:kocho-3:20140424090425p:plain

世界の石油需要増は、リーマンショック直前の2007年から12年までの5年間で、世界の需要増加は、年率平均で0.3%程度である。同じリーマンショック後の5年間で、石油以外のエネルギー源への需要はなんと12%、年率で2.5%も増加しており、石油需要の独り負けは歴然としている。中でも途上国を中心に石炭需要の伸びが印象的である。

 

この結果、世界の一次エネルギー需要に占める石油のシェアは2012年に33%まで低下した。依然最大のエネルギー源としての地位を何とか確保しているとはいえ、石炭との差は2%余りに縮小した。しかも、石油需要の内で1割を占める、正確にはエネルギー需要ではない化学原料用の石油需要を除くと、明らかに既にエネルギー源の王座を石炭に明け渡しているのだ。統計数字は「石油時代の終わり」を示している。

 

石炭と石油の最大の違いは、価格水準である。現状で石油価格は、同じ熱量、エネルギー量の石炭より、45倍も高い。ここまで価格差が広がれば、石油需要が減るのは当然である。(178ページより再構成)

 

 

 

本書は環境とエネルギーに関する歴史と原理を説明している。石油がもはや最大のエネルギー源ではない事、石油の枯渇(オイルピーク説)は当面発生しない事、供給者の都合で石油の価格は大幅には下がらない事、を認識できる。この事実の世界経済、地勢学的な影響などインパクトを内包している。

 

蛇足

 

石油の時代の終焉、これは予測ではなく、過去のファクトである。