毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

世界一の投資家ジョージ・ソロス氏「私は間違っているかもしれない、」の持つ意味~より良く認識し行動する為に

ジョージ・ソロスGeorge Soros1930812 -

ハンガリーブダペスト生まれのハンガリー系およびユダヤ系アメリカ人の投機家・投資家・ヘッジファンドマネージャー。哲学者、慈善家、自由主義的な政治運動家でもある。自身を「国境なき政治家」と称す。(WIki)

 

f:id:kocho-3:20140423075919p:plain2014年ダボス会議

http://www.headlineasia.com/george-soros-warns-that-a-chinese-slow-down-is-the-biggest-worry-of-2014/

 

 ジョージ・ソロス―投資と慈善の哲学 (NHK未来への提言)

本書は2008年、NHKのインタビュー番組を基に較正。

 

「わたしたちの誤解が実は世界を形成している」

 市場経済は「わたしたちは皆、誤りを犯す存在であり、世界に対する私たちの誤解が実は世界を形成している」という認識をもとにして動いているシステムなのです。この考え方は、金融市場で働く上でたいへん役立ち、私に大金をもたらすことになりました。(15ページ)

 

ソロスの哲学は哲学者カール・ホッパーの思想~反証可能性

ホッパーによれば、どんなに実験や観察を繰り返したとしても、究極的な正しさは永久に得られない。つまり科学と非科学を隔てているのは、正しさの有無にはなく、むしろ科学の本質は、「間違いが証明する可能性」、すなわち反証可能性があるかどうかにこそあるとしたのである。ホッパーの考える科学とは、間違いを受け入れ訂正され続ける無限のプロセスであり、それこそが科学を科学たらしめていると考えたのである。(28ページ)

 

反証可能性は批判的合理主義という行動につながる

人間社会にはあらゆる知に批判的な検討を加え、論議を重ねることで、世界をよりよき者へと発展させていかなければならないという願いである、ホッパーはこれを「批判的合理主義」と呼び、尊重した。(29ページ)

 

ソロスの翻訳助成プロジェクト~ソロスの哲学の一例

B・アンダーソンがナショナリズムについて論じた「想像の共同体」にソロスの活動が紹介されている。なぜなら「想像の共同体」の著作自体がソロスプロジェクトのリストに挙がったからである。

 

1990年半ば、ソロスは学者・司書のグループを集め、人文社会分野においてもっとも重要な本100冊のリストを作成するように要請した。ソロスの計画は、東欧の元共産主義諸国国家、ソ連邦の崩壊ともに生まれた共和国、これらの国々でこの100冊の本を出す出版社に翻訳助成をしようというものであった。

 

推薦書リストは出版社の参考用で、出版社は他の人文科学書の翻訳提案を(ソロスの財団に対し)することもできた。助成学は国によって違い、出版費用全体の30%から80%を負担した。』

 

私は間違っているかもしれない

「常にわたしは間違っているかもしれない」と思って活動しています。ですから、私は人々を助けたいと思っていますが、傷つけたくはありません。「どうやったら傷つけないか」ということがわたしの基準であり、その上で初めて助けることができるのです。

常に(他人に対する)批判精神を忘れない事は大切ですが、同時に自己に対しても批判的である事も大切です。おそらくこの考え方が、私が金融市場で成功した理由であり慈善活動における私の指針にもなっています。(27ページ)

 

ソロスは東欧・中欧の旧共産圏に翻訳助成を行った。援助は一部分であり推薦書リストはあくまで推薦であった。相手(援助をする側)を傷つけない、という事がこのプロジェクトに現れている。

 

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哲学は何の為に存在するか?~よりよき判断を行う為

ソロスの投資での成功からも哲学の重要性がわかる。よりよき判断を行う為に哲学は存在する。投資にとって最大のリスクは己の感情である、強い感情、恐怖の感情に左右される事なく合理的な判断を常にできるか、哲学は感情を制御する事が可能になる。哲学は思考のOSである。

 蛇足

 私こそ、「私は間違っているかもしれない、」この言葉を噛みしめたい。