毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

魚と陸生生物の中間生物、その化石がどうやって発見されたか?セレンビリティの成功原理

 

ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト: 最新科学が明らかにする人体進化35億年の旅 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

シュービン氏は個体生物学・解剖学の研究家。「ひじがあって腕立て伏せのできる魚、ティクターリクの化石を発見」の経緯が本人により明かされる。

(Wiki)

ひれから足へ、3億7500万年前の化石に進化の節目 米研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

ティクターリーク(魚類と原始的陸生動物の中間型)

私たちが見つけた新しい生き物は、何が魚と両性動物とを区別しているかという既成概念を崩壊させてしまうような代物だった。それは魚類と同じように背中に鱗と、幕のついた鰭(ひれ)を持っている。しかし、初期の陸生動物と同じように、偏平な頭部と頸(くび)を持っている。そして鰭の内部を調べてみると、上腕、前腕、それに手首の一部にさえ対応する骨が見られる。関節もある。この動物は、肩、肘、手首の関節を持つ魚なのだーそれらのすべてを鱗の内部に隠しもった。(43ページ)

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魚と陸生生物の中間、の発見だけでなく、現在の人間の構造を理解する為の証拠

 

化石の発見は予測可能である

化石の発見がしばしば驚くほどの正確さと予測可能性を持って行えるという事実をほとんどの人は知らない。発掘現場で成功できる確率が最大になるよう、出かける前にしっかりと予習しておくのである。(中略)何が厄介かといえば、化石のでる場所がごくわずかしかないことである。成功の確率を最大にする為に、私たちは3つの条件を兼ね備えた地層を探す。つまり、適切な年代のもので、化石を保存するのに適したタイプの地層があり、しかも地表に露出した岩石がある場所を探すのである。

 

ティクターリークは北極圏諸島(カナダ)の3億7500万年前の太古の河川から発見

発見するまで6年かかったが、この化石は、古生物学上の予測を裏付けるものだった。二つの異なった種類の動物の中間型を示す新しい魚だというだけでなく、地球の歴史におけるまさにぴったりの時代に、まさにぴったりの太古の環境で発見されたのだ。

 

セレンビリティ~目的を運良く発見できる能力

私達の最初の重要な発見は砂漠でなされたわけではなく、ペンシルバニア州中部の道路沿いで、化石の露出を期待するにはほとんど最悪の場所だった。(26ページ)

バックに荷物を積み込む覚悟ができていた。ペンシルバニア州の高速道路で学んだ教訓が、カナダの高緯度北極圏で私たちの助けになってくれるだろう。北極券の地層はグリーンランドペンシルバニア州の化石床よりさえも古い。(中略)さらに好都合なことに、そこは古脊椎動物学者にまだ知られておらず、従って化石はまだ調査中だったのである。(32ページ)

 

情報を整理し、まずは小さなチャレンジ、そこで経験と成果をあげる。そして人のまだ手をつけていない大きな場にチャレンジ、6年を経て発見。成功したからこそ振り返れる過去。

そしてここには決して語られない「失敗」がある、なぜならそれもまた重要なプロセスであり、「失敗」ではなくエピソードなのだから。

 

蛇足

人は毎日「失敗」いうエピソードを経験している。それはセレンビリティの意味。