毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

世界初の金貨はいつ、どこで創られたか?~お金から囚われない為に知る事

 100のモノが語る世界の歴史1: 文明の誕生 (筑摩選書)

ニール・マクレガー氏は大英博物館館長。「大英博物館の所蔵する世界の至宝から精選された百点でたどる人類のあゆみ。 」

「クロイソスのように金持ちだ。」

Wikiによれば現代ヨーロッパ系の言語では今から2,500年前のリディア(現在のトルコ)のクロイソス王は大金持ちの代名詞であり、英語では「大金持ち(rich as Croesus, またはricher than Croesus)という慣用句がある。ではどうして金持ちになったか?

 

リディアは金の産地であると同時に国際通商都

クロイソスは現代のトルコ西部を支配していたリディアの王だった。小さい社会であれば、実際にはあまりお金の必要性はない。友人や隣人であればたいてい信頼できるので、相手のために働けば、あるいは食べ物や品物 をあげれば、同じようにお返しが戻ってくる。我々が理解しているようなお金の必要性は、二度と会うことがないかもしれず、必ずしも信頼できない見知らぬ人とやりとりする際に高まる。つまりリディアのサルディスのような国際都市で取引をする場合だ。

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http://www.geocities.jp/timeway/kougi-7.html

それまでの硬貨が持っていた問題点~純度と価値が不明確

リディアや近隣の国々でクロイソスの時代より100年ほど前に硬貨が発明されてからも、この純度の問題はまだ残っていた。彼らは自然に産出する金と銀を使っており、純粋な金属ではなかったからだ。どうすれば特定の硬貨が何でできていて、それゆえどれだけの価値があるのか正解にしる事ができるであろうか?(232ページ)

 

クロイソスは純度と重量を標準化した金貨を発行~それを支えた鋳造技術

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British Museum - Image gallery: coin

 

 

一定の重量で絶対的に信頼できる価値のある純度と純銀の硬貨を国家が鋳造することが、その解決策になる事に彼らは気づいた。そこにある刻印は重量と純度にたいする保証です。

純度を保証するにはほかの元素を加えるだけでなく、不純物を取り除く能力も絶対に必要です。地中になる金と一緒に出てくる主要な元素は銀であって、その分離はそれまで行われていませんでした。銀は化学変化にそれなりに抵抗性があり、金は非常に化学変化に強い物質です。食塩、つまり塩化ナトリウムと一緒に「るつぼ」に入れて摂氏800度ほどに熱する事で、ようやくかなりの純度の高い金があとに残ります。

同じくらい重要な事は、彼らはその重さを示し、それによって価値を表すシンボルをそこに刻印する職人を雇った。(234ページ)

クロイソスの金貨が提供したものは金本位制

信頼に足る最初の通貨を世界に提供したのが、クロイソスだったのだ。金本位制はここに始まる。その結果が巨万の富となった。(235ページ)

ではそれ以前はというと試金石を使っていた。貴金属と金品位がわかっているサンプルを「試金石」の上にこすり線を描く。その線の色を比較する事で純度を測る、熟練者であれば%オーダーの品位を鑑定することが充分可能であり、日本でも江戸時代まで測定に使用されていた。どうして我々が今も「試金石」という言葉を使っているか?どうして英語で「クロイソスの様に金持ちだ」と言うのか?我々がお金が交換価値の提供、それ以上のものだという幻想に囚われている証拠である。

 

蛇足

お金の本質は見知らぬ人同士でも価値を交換できる便利な道具。それ以上でもそれ以下でもない。