毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

自分で地動説を証明できるか?

それでも地球は回っている―近代以前の天文学史

青木氏は天文・宇宙分野のサイエンスライター、本書では副題の通り古代の宇宙観から現在に至る仮定を解説する。

古代ギリシャの宇宙観

宇宙のすべてを、そして世界のすべてを支配する「神々」の存在を排除し、あらゆる現象を純粋に「物体の営み」としてとらえる、現代物理学の始まりととれる考え方である。(27ページ)

同心天球説が敗退した後、何と、「地動説」と呼べる、極めて斬新な宇宙モデルが登場するのである!だが、結果的には「宇宙の真理」を示しているこの説は受け入れらることなく、歴史の闇に埋もれてしまう。その後はもう一つの大黒柱となる宇宙観「周転円説」の時代を迎え、この説が、16世紀にコペルニクスにより地動説が再発見されるまで、「宇宙の真理」として全世界に君臨することになる。(54ページ)

天動説(WIKI)

地球は宇宙の中心にあり静止しており、全ての天体が地球の周りを公転しているとする宇宙論。大別して、エウドクソス(BC407-BC353)が考案してアリストテレス(BC384-BC322)の哲学体系にとりこまれた同心天球仮説と、プトレマイオス(AC83-AC168)の天動説(周転円説)の2種がある。単に天動説と言う場合、後発で最終的に体系を完成させたプトレマイオスの天動説のことを指すことが多い。

アリスタルコス(BC310-BC230)の元祖「地動説」

彼は観測により地球に対する太陽と月の距離と、その大きさを求め、地球が太陽の回りを公転する方が 自然な姿である事を見抜き、新たな宇宙モデルを構築するのであった。

アリスタルコスの大いなる躍進も、その後の天文学の順調なる発展にはつながらなかった。「宇宙の中心に位置する不動の地球」という固定観念に囚われた保守派の反論は、「地球の公転を示す物的証拠が観測的に得られていない」との一言に尽きた。(中略)もしこの段階で、アリストタルコスの説が受け入れられていたならば、天文学は2000年もの足踏み状態に陥ることなく、発展をみたかもしれない。(60ページを再構成)

アリスタルコスのシンプルな観測

①太陽と月の距離を観測する。(半月と太陽の角度、太陽離角を測定する)

→87度と測定、三角関数により地球と月、地球と太陽との距離の比が1:19と計算した。

②月と地球の距離を観測する。(月食時の月に写る地球の影から計算する)

→月に生じる影の大きさから地球と月の大きさは3:1だと推計した。

③太陽と月の直径はほぼ一緒(地球から同じ大きさに見える)

→地球から月、地球から太陽の距離は3:19、そして月、地球、太陽の大きさの比は、1:3:19と結論を出した。

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(現在我々は正確なデータとして1:3.7:401、である事を知っている。この誤差は主に太陽離角が89.52度である事により生じる)

そして最後に「地球よりはるかに大きな太陽が、より小さな地球に振り回されるがごとく、その周辺を公転していると考えるよりも、大きな太陽の回りを小さな地球が巡っているととらえた方が、はるかに理にかなっているのでは、、」(59ページ)と考えた。

蛇足

月食の写真により自分でも地動説を認識できる、という事実をしる。