毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

欧米文学の源流は『オデュッセイア』、この模倣から文学がスタートしている~『早わかり 世界の文学 』清水義範(2008)

早わかり世界の文学―パスティーシュ読書術 (ちくま新書)

作家・清水義範の小説スタイルは「パスティーシュ(模倣芸術)」と呼ばれてきた。世界の文学はつながっている。2008年刊 

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パスティーシュ読書術

 

パスティーシュはフランス語であり、美術などで使われる用語で、模造品、模造画という意味である。そして、文学でも、模倣作品、という意味で使う。つまり、模倣という作業によって、もとのものとは別種の、次元の異なる面白さが出てくるという技法である。(52ページ)

世界十大小説~『オデュッセイア』ホメロース著 紀元前800年頃

 

古代ギリシャの英雄叙事詩である。紀元前12世紀に実際にあったトロイア戦争での、英雄アキレウスの活躍を描くのが、もう一つの名作『イーリアス』であり、その戦地から10年もかかって知恵の男オデッセイスがギリシャに帰還する話が、『オデュッセイア』である。(107ページ)

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10年 に渡る苦難のオデュッセイア

欧米文化圏の源流

 

主人公の苦難の旅と、その息子の父親探しと、妻の貞操の危機という3つの要素からなっているのだ。紀元前の作品とは思えないような完成度であり、見事にドラマチックである。神と人間とが会話を交わすような原始性もありながら、人間臭し復讐劇でもある。欧米の文化圏では、神話のようなこの話が知られていて、読んだ事のない人でも、オデュッセウスといえば、苦労して旅する人だと知っている。だから例えば『2001年宇宙の旅』という映画の現代が『2001年 ア・スペース・オデッセイ』だったりするのである。『オデュッセイア』と(その前編に当たる)『イーリアス』は世界で最初の大長編小説と呼んでいいものなのだ。(109ページ)

オリジナルとパスティーシュのどちらが価値があるか?

 

欧米圏では紀元前800年に書かれた叙情詩『オデュッセイア』は様々な所で引用され、模倣されてきた。パスティーシュが面白いと感じる為にはオリジナルを知っていなければ理解できない事も多い。そして『オデュッセイア』に人類の普遍的な物語の構造を見出す。我々は学校で人真似は好くない、と教わる。学校はある意味擬似的な競争社会なので隣の人の答案をコピーする事は禁じられる。更に言えば人真似が好くないのは、そのコピーする対象が優秀とは言えないもの、コピーの対象物にマイナスの効果をもたらす場合であるべきである。優れた物をコピーする、これは文学において人類が営々と続けてきた事だと気づく。

蛇足

 

周りにコピーできる優秀なものはあるか?

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