毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

情報産業の先駆者"宗教"、そして文明始まって以来のキラーコンテンツ"味覚"~50年前の情報文化論

情報の文明学 (中公文庫)

梅棹 忠夫(1920ー2010)は生態学者、民族学者、情報学者、未来学者

本書は1962年執筆、インターネットなど存在しない、わずかにコンピュータが登場した時代の情報文化論 

 

情報産業の先駆者としての宗教

宗教教団とは、神を情報源とするところの、情報伝達者の組織である。「神聖化」という特殊処理をうけた一定タイプの情報を大衆に伝達すれば、その伝達行為によって生活を支えることができるということを発見したとき、情報業の先駆形態としtの宗教が発生し、職業的宗教家が誕生した。(41ページ)

情報の価格決定理論~お布施

(坊さんのお布施の)価格はどうしてきまるか。お経の長さによってきまるわけでもないし、木魚をたたく労働量できまるものでもない。お経の内容のありがたさは何ビットであるか。とうてい測定はできない。・・・お布施の額を決定する要因は、ふたつあると思う。ひとつは、坊さんの格である。えらい坊さんに対しては、たくさん出すのが普通である。もう一つは檀家の格である。格式の高い家、あるいは金持ちは、けちな額のお布施をだしては格好がつかない。お布施の額は、その二つの人間の社会的地位によってきまるのであって、坊さんが提供する情報や労働には無関係である。(60ページ)

もう一つの情報産業の先駆者~味覚情報としての調味料

味は情報である。食品は各種の栄養素を含むと同時に、味覚情報の担荷体である。・・・ところが情報だけの食品がある。調味料がそれである。みそ、しょうゆ、佐藤、塩、いずれもそうであるが、これらはないカロリーやミネラルを含んでいる。化学調味料にいたっては、味覚情報のエッセンスである。(254ページ)

こんにゃく情報論

(こんにゃくの)主成分はマンナンと呼ばれる物質で、これは食べてもほとんど消化されない。つまり、栄養物としては価値のない食品である。・・・それは、歯ざわりその他で味覚に満足を与え、消化管の中に入ることによって、満足感を与える。・・・情報というものは、かなりの程度にこのコンニャクに似た点がある。情報を得たからといって、ほとんどなんの得もない。それは感覚器官で受け止められ、脳内を通過するだけである。しかし、これによって感覚器官および脳神経系はおおいに緊張し活動する。(204ページ)

情報の文明史

改めて本書が執筆されたのは50年前。宗教と味覚、これらは文明の誕生と同時に追求されてきた。情報産業とは実は極めて古い産業、長い文明史から見れば本書が執筆された50年前と今は同時と言っていい。宗教と味覚の分析をまとめると、「情報とは脳神経系に興奮を与える物で、その価格は情報の提供者と需要家の社会的な格によって決定される」となる。このロジックは当然にIT空間においても通用すると考える。お坊さんの格はブランド論と相似形を持ち、バーチャルな知覚情報を刺激として受容している。IT空間においては物理的制約が減少する分だけ、このロジックはより顕在化している。人類は昔から情報化の中にいた。

蛇足

より少ない物理量で脳をより活性化させる、それが情報化の本質

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