毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

アメリカは3回見つけられていた~『アメリゴ・ヴェスプッチ―謎の航海者の軌跡』色魔力夫 氏(1993)

アメリゴ・ヴェスプッチ―謎の航海者の軌跡 (中公新書)

色魔氏は元外務官僚、アメリゴ・ヴェスプッチは、謎の航海者である。かれの評価は500年の歴史を通じて二転三転した。(1993)

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1507年「世界地理入門」出版

・・・(ロネーヌ地方の学者たちによって)サン・ディエ修道院から、一冊の世界地理の本が出版された。『コスモグラフェィエ・イントロドゥクティオ』(世界地理入門)である。そのなかで、新たに発見された世界第4の大陸を、「アメリカ」と命名し、付属の世界地図には、南米大陸の部分に「アメリカ」と記入したのである。「アメリカ」は勿論、アメリゴ・ヴェスプッチにあやかる名称である。この本は、大きな反響を呼び、またたく間にヨーロッパに普及した。その年の中に、7版を重ねた。各版1千部であるから、7千部が売れた。超ベストセラーだったのである。かくしてアメリカの呼称は、その音声の美しさと相まって、広く世界に定着することとなった。(140ページ)

「・・・もう一つの第四の部分がアメリクス・ヴェスプティウスによって発見されたので、その発見者アメリクスに因み、アメリカ、即ち、アメリクスの土地と呼ばない理由はないと思う。それは、また、ヨーロッパおよびアジアが既に女性の名前を貰っているように」と。(141ページ)

アメリゴ・ヴェスプッチ(伊 1454 - 1512)

アメリカ州を探検したイタリアの探検家にして地理学者。フィレンツェ生まれ。

アメリゴは1503年頃に論文『新世界』を発表する。1499年から1502年にかけての南米探検で彼は南緯50度まで沿岸を下った。南米大陸がアジア最南端(マレー半島、北緯1度)とアフリカ最南端(南緯34度)の経度をはるかに南へ越えて続くため、それが既知の大陸のどれにも属さない「新大陸」であることに気づいた。(Wiki

錯誤の喜劇

 

アメリゴは、コロンブスとそれに続く航海者達がアジアの一部と思い込んでいた未知の陸地が新しい別の大陸であるという事実に、合理的な推論によって、はじめて気がついた人物である。・・・その航海には、彼は天文地理学者として参加したものであって、船団の指揮者でもなく、船長でもなかった。つまり、そもそもそのような功績を主張する権利はなく、そのような立場にもなかった。・・・冬至ヨーロッパの辺境のロレーヌの一角にいた若い学者たちによる素朴で善意の発議であって、アメリゴ自身のあずかり知らぬことであった。(3ページ)

地理的発見と概念的発見、そしてネーミングの発明

 

アメリカは3回見つけられた。地理的発見はコロンブスによって、概念はアメリゴによって、そしてネーミングはロレーヌの学者達によって行われた。

歴史に名を残す、という。コロンブスが最も有名だが、アメリゴの存在とネーミングのストーリーは知られていない。考えてみれば新しい概念を提示したアメリゴの役割は決して小さくない。物理学の法則が新たな観測に加えて新たな概念を必要とするのと同じである。そしてロレーヌの学者達は素晴らしいネーミングとともに出版し、ヨーロッパ世界にアメリカの存在を広く認識させたことである。

偉大なことは多くの違った才能の集積によって成し遂げられる。

蛇足

1500年当時、メキシコにはアステカ帝国アンデスにはインカ帝国が繁栄

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