毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

とうがらしと思考の時間軸の関係

 

世界の野菜を旅する (講談社現代新書)玉村氏は食を中心とする文筆家。本書の帯は「この一冊で野菜通!」 

トウガラシ(唐辛子)Wiki

ナス科トウガラシ属の多年草又は低木(日本などの温帯では一年草。メキシコ原産(アンデス地方という説もある)。果実は香辛料又は野菜として食用される。「トウガラシ」は「唐」から伝わった「辛子」の意味である。ただし、「唐」はばくぜんと「外国」を指す言葉で、中国経由というわけではない。

ホットペッパー(hotpapper)

トウガラシは、現在のメキシコを中心とした中央アメリカ原産とされるが、これもまた、紀元前5000年には既に野菜として栽培されていたといわれる古い植物である。

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唐辛子・こしょうに関するQ&A | S&B エスビー食品株式会社

コショウ(papper)を求めてインドへ向かったコロンブスが、カリブ海に迷い込んだのにインドだと思ってそこにいたインド人とよび、現地の人がアヒと読んでいたトウガラシのことをトウガラシとはやとちりしてペッパー(hotpapper)と呼び続けたのも、世界の食文化に多大の貢献をした大間違い、ということになる。(101ページ)

コロンブスがアメリカから持ち帰ったトウガラシは、1493年にスペインに紹介され、その後、十六世紀のなかばまでにヨーロッパ各国に伝えられ た。アジアへは、スペインやポルトガルの船が運び、日本には1542年、ポルトガル人によってタバコとともに伝えられたとされる。インドにも、また朝鮮半島にも、ほぼ同時期に伝わった。(112ページ)

 

辛くないカレーに辛くないキムチ

トウガラシがインドに到着する前は、クミンたクローブや、カルダモンの入ったガラムマサラはあったとしても、辛味がある材料はコショウかショウガぐらいのものだった。だから15世紀以前のインド人は、辛くないカレーを食べていた。キムチは沈菜といって、野菜を水に沈めた、いわゆる水キムチが最初である。トウガラシが伝わる前の朝鮮半島では、赤くも辛くもないキムチが食べられていた。

玉村氏は食材とする人間も国や地域によってその嗜好が大きく異なる事を指摘する。インドや韓国、タイ、北アフリカ諸国では重用される一方、ヨーロッパの様に好まれない地域もある。

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トウガラシ - Wikipedia

トウガラシの辛味は胎座という部分に含まれるカプサイシンという物質による。トウガラシの品種は辛いものから辛くないもの(ピーマンや甘唐辛子" ! ")まで比較的簡単に品種改良できる

トウガラシはなぜ辛いか?

玉村氏は「トウガラシが辛いのはトウガラシの自己満足」と表現する。そして食材として利用する人間トウガラシの辛味を好むか否かも「論理的には推し量れない。」と分析する。

我々はトウガラシが世界に広がったのは今から500年前、我々はインド料理も韓国料理も辛いものと思い込んでいる。でもこれは「わずか」500年前。我々は日常で500年を超える時間軸では思考していない。私は知識によって思考の時間軸を延長させる事が出来ると考える。

蛇足

トウガラシはナス科、ナスの起源はインドだそうである。ナスとトウガラシ、どっちが古いか、どこが起源か、競う事に意味はない。