毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

未来からのメッセージを載せた本~時間の等方性と2020年はやぶさ2

はやぶさ―不死身の探査機と宇宙研の物語 (幻冬舎新書) 

吉田氏は数学・物理学のサイエンスライター。あとがきで「偉人の伝記も、学問の形成史も読まれなくなって久しい。広い層の方々に、世界に冠たる宇宙研の歴史と、そこで働く人々の発想を、人のの和を重んじる手法を、そして何より、小惑星探査機「はやぶさ」の大冒険を知って頂きたく重い、筆をとった次第である。」と書く。

小惑星サンプルリターンの意義

火星軌道と木星軌道の間に大量に存在する小惑星は、太陽系誕生の秘密を握る玉手ばこである。小惑星は、その小ささ故に、重力も小さく、熱に関する変成も受けていない。従って太陽系誕生以来の記憶を残している。もし、そのサンプルを採取して、調べることが出来たなら、太陽系の成り立ち、当時の様子が手に取るようにわかるかもしれない。それと同時に、小惑星は地球に襲いかかって全ての文明を葬り去る悪魔の使いになる可能性をも秘めている。(4ページと185ページから再構成)

はやぶさをめぐる年表と本書

本書とはやぶさをめぐる時系列を整理

2003年5月9日 打ち上げ

2005年11月20日 小惑星イトカワ」へタッチダウン

同年11月26日イトカワから上昇

同年12月8日通信トラブルで消息を絶つ。帰還絶望視。

2006年1月23日地上との通信復活

○2006年11月30日本書第一版発行

2007年4月25日帰還に向けた本格的運転再開

2010年6月13日地球に帰還

「2010年6月、ウーメラ砂漠」で未来を描写

砂漠の真ん中でコンテナは回収された。興奮を抑えきれない研究者達は、保管されたコンテナの周りに集まり、再び空を見上げている。視線の先には、踵を返し永遠の旅にでた「はやぶさ」が居る。「はやぶさ:は星になったのである。ありがとう「はやぶさ」、君のことは忘れない。(292ページ)

私の手元の本は2010年6月25日第二版である。この章は2006年に吉田氏が執筆したままの2010年の未来の描写である。私は改訂版なのかと最初は考えた。

時間の等方性

吉田氏は本書で、空間での一様性と等方性、そして時間の一様性、等方性、そして絶対性の概念を使ってロケットの原理を説明する。「投げられたボールの映像だけではそれが順方向なのか、逆方向あんおかは分からない。これを過去と未来に対する『時間の等方向性』と呼ぶ。」(208ページ)

2014年1月に本書を読むと本書が時間の等方性を表している事に気づかされる。そしてこれはもっと過去にも未来にも拡張されている事に驚く。

 

1955年 糸川英夫氏が中心となってペンシルロケットの水平発射

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日本初のロケット実験

 

2014年12月はやぶさ2発射、2020年12月地球に帰還

 

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【科学】「はやぶさ2」6年間の長旅へ 12月出発+(2/2ページ) - MSN産経ニュース

 

蛇足

私も2020年には「今から6年後からみた私の設定したミッション」を終えている。